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ツナグ働き方研究所

03 COLUMN2017.04.20

  • コラム

    【店長応援企画・店長のミカタ】
    「職場」が最大の採用メディア…アルバイト採用のヒント
    パーソル総研 渋谷和久氏×ツナグ働き方研究所 所長 平賀

    21世紀をリードするニッポンの店長像を描く。このアプローチこそが、おもてなしの国ニッポンにおける飲食店の未来を創造するのだ、という思いで立ち上げた本連載。今回は、パーソル総合研究所社長の渋谷和久さんをお迎えして、アルバイト・パート採用の当事者である店長が突き当たる課題と解決のヒントについて意見交換をさせていただいた。
    人材採用は選ぶ時代から選ばれる時代に

    平賀

    渋谷さんが社長を務めるパーソル総合研究所と東京大学准教授の中原淳さんとの共著である『アルバイト・パート 採用・育成入門』を読ませていただいて、そのデータの豊富さと鋭い知見とに感銘を受けました。比べるのもおこがましいですが、私も同じ頃に『非正規って言うな!』という本を上梓しまして、共感する部分が多かったんですね。



    渋谷

    こちらこそ、平賀さんの『非正規って言うな!』という本のタイトルには、すごく共感しました。われわれが今やらなきゃいけないのは、こういうことだと思っています。



    平賀

    ありがとうございます。同志と呼ばせてください(笑)。



    渋谷

    平賀さんはリクルートで、私はインテリジェンスでアルバイト・パート採用の求人事業に関わる仕事に長く携わってきましたから、お互いに感じている問題点なども共通する部分があるかもしれませんね。



    平賀

    さて、飲食業界に限らず人手不足問題が深刻度を増していますが。



    渋谷

    でも何人くらい足りないのかという話は語られていません。そもそも具体的な数字がなければアクションのしようもないのに。そこで、われわれがその試算をしたところ、2025年には583万人の人手不足に陥るという数字が出ました。



    平賀

    逆に言えば、この583万人が埋まらなければ、日本の経済成長は困難だということですよね。



    渋谷

    そうなんです。実質経済成長率0.9%は維持できません。だからこそ採用におけるいくつかのパラダイムの転換を、僕らが啓蒙していかなきゃいけないと僭越ながら思っています。そもそも人が足りない時代なのに、辞めたらまた採用すればいい、新店を出すならその時に採ればいいという考えは通用しなくなっています。



    平賀

    労働者人口が増えていた時代は、それでも良かったんでしょうけどね。



    渋谷

    でも現在の需要と供給のバランスで考えるなら、お店、あるいは店長は、選ぶ側ではなく選ばれる側になったというパラダイムシフトに、どれだけの人が気付いているのかなと。

    穴の空いたバケツに水を入れているだけの構造ともいえる状況の中、水を入れていくことももちろん必要なんですけど、誰かがその穴をふさぐことの重要性に気付いてもらう仕事をしないとダメかもしれません。



    平賀

    おっしゃる通りですね。面接は「採用側が応募者を見定めて選ぶもの」だと思っている店長は、実は応募者から見定められているということに気付いていないんですよね。



    渋谷

    そうなんです。だから、とりあえず採用してからその後で定着させるための工夫をする、という考え方ではなく、既にいるスタッフが職場に安定的に定着している、つまり、働きやすい良い職場がつくれているから、応募者にも「ここで働こう」と思ってもらえる──そういう循環をつくるべきだと考えています。


    職場は最大のメディア 応募前に下見に来る人は約半数にも

    渋谷

    鶏が先か卵が先かという話になるんですけど、平賀さんの本にも記されていた通り、今はどんなに求人メディアに良いことを書いたって、それとは別ですぐにインターネットのクチコミもチェックされてしまうわけですし、われわれの調査によれば、そもそも応募する前に実際にお店の下見に足を運ぶ人は、全体の約49%、実に半数に上ります。



    平賀

    われわれも同様の調査をしましたが、やはり下見率は52%でした。「職場こそが最大のメディア」という言葉が御社の著書の中にもありましたが、まさに面接の前から見定められているんですよね。実際の面接時も、職場の雰囲気や店長の言葉は応募者にとって「ここで働いても良いか」を見極める重要な『メディア』なんですよね。



    渋谷

    まさに。面接では「仕事のやりがいや魅力」を伝えるのはとても必要なことですよね。でも、「伝えている」と答えた店長は約6割。伝えていない残りの約4割の店長はその時点でもうダメですよね。

    そして、6割が「伝えたつもり」でいても、面接を受けて「伝わった」と感じた応募者は全体の3割。つまり伝えたと思っていても、結局は半数にしか伝わっていないという数字です。選ぶ側から選ばれる側になっているというのに、選ばれるための魅力ややりがいが、約3割の人にしか伝わっていない。



    平賀

    それから、御社の著書には「現実的職務予告」という概念についても書かれていて、やりがいや魅力だけでなく、どんな職場なのかを最初にきちんと見せることが離職を防ぐという記述もありました。



    渋谷

    「聞いた話と違う」というのが、アルバイターの労働意欲に極めてネガティブに影響します。1カ月以内の早期離職の場合、このような面接の影響が最も大きかったんです。面接時にきちんと説明してもらっていなかった、もしくは説明と現実とのギャップが離職に強く影響することが明らかになりました。



    平賀

    リアリティ・ショック(※)という現象は、新卒の入社時に限った話ではないんですね。

    ※リアリティ・ショック…入社前に抱いていたその職場への理想や期待と現実とのギャップから受ける衝撃のこと



    渋谷

    もう一つ重要なのは、応募者に「ホールがいいのかキッチンがいいのか」「週にどれくらい働きたいか」というような条件合わせだけでなく、「なぜアルバイトをしようと思ったのか」「この職場でどんなことを得たいのか」という希望をしっかりヒアリングできているかということ。

    これも4人に1人は「聞いていない」という数字が出ていて、応募者の方で「聞いてもらえた」という実感を感じているのはまた半分程度なんですよ。

    極めてベーシックなことなんですが、これは由々しき問題です。



    平賀

    そもそも店長さんが忙しくて、面接時間をきちんと取れないという問題もあります。店長さんと話していると、10~15分で終了という方が非常に多いですね。それもまったく悪気がないんですよ。



    渋谷

    20年とか25年前はそれで良かったんですよね。お店は選ぶ側だったし、応募者も「採用してください」というスタンスだったので。



    平賀

    今は、スタッフが魅力的だと感じる店舗とはどんなものかを、店長自身がしっかりと考える必要があるということですね。そういった意味でも、やはり店長が採用のキーパーソンということですね。


    店舗で離職率を抑えるということを経営側が評価するべき

    平賀

    飲食店の店長にとって、人材採用、そして人材の定着は、店舗の業績にも大きく関わってくる重大なミッションであると思うのですが、そのマネジメントが店長さんだけの負担になると、店長自身が辞めたくなってしまったり、さらなる悪循環を生み出しかねません。

    現場の店長だけでなく、経営側にもパラダイム転換の必要性があると思うのですが。



    渋谷

    主にチェーン展開をしているような大きな企業での話になるかと思いますが、外食産業は人材産業だという先進的な会社もあれば、いない企業もありますよね。



    平賀

    現場と経営側が同じ温度感でアルバイトやパートの人材採用を重要視しているかどうかが大切なポイントなんですが、現場任せになってしまって難しいところもあります。経営側のサポートやマネジメントが問われる時代とも言えますが。



    渋谷

    飲食店チェーンの業態で言えば、店長の評価指標に何を置くかという話も重要で、人材が大事だと理解している企業は、業績や売上だけではなく、コンピテンシーや店長の能力を評価指標に必ず入れています。

    例えば離職率の低さも評価指標に入れてしまえば、店長はみんな工夫するし、会社経営からすれば結果的には採用コストや人件費の削減にもつながり売上も上がるかもしれません。

    それを経営側が理解した上で、重要な評価指標としてしっかり入れていくことが望まれます。



    平賀

    確かにそうですね。でも、仮に自分が店長だったとしたら、業績を上げろと言われている中で、そこにさらに複雑な指標が絡んでくると、もっと負担に感じてしまわないかと不安になるのではないかと。育成マネジメントが長期的には業績アップに結びついてるとは思いつつ、今自分がそれに時間を割いてしまったら、誰がお客さんに対応するのか、みたいな葛藤もあるでしょうし、何を大事にすればいいのかが、ちゃんと現場の店長にインプットされてないようにも思います。



    渋谷

    現場は経営の本気度を見ますからね。口では離職率を抑えろと言っても、「結局評価は売上じゃないか」となれば、店長も動かないでしょう。経営の本気度は、リスクを取るか投資をするか、具体的なアクションを現場に見せなければ伝わらないですよね。

    そういう意味でも経営の判断はとても大事です。



    平賀

    経営側からの働きかけにより、現場での人材採用の動きが大きく変わるということを、特にチェーン展開をするような大きな企業では常に考えていかなければいけないですね。


    都心の飲食店店長こそが究極のダイバーシティ・マネジメントを求められる

    平賀

    総体的な人手不足で、これからも引き続き慢性的な採用難の時代が続くことが予想されるわけですが、そうなると、アルバイトやパートの領域は若者層だけでなく、主婦やシニア、外国人といったさまざまな労働力を今後ますます必要とするようになるでしょう。

    店長は、それぞれのスタッフに対応したマネジメントが必要になり、ますます忙しくなってしまうのではないかと。



    渋谷

    例えば、学生さんって、店長への人格的な信頼度が労働意欲を大きく左右するんですよね。学生さんに好かれる店長は、いろんな相談を受けたり、カリスマ性を持ってマネジメントができる。でも、主婦層には同じマネジメントでは通用しなくて、例えば指示の的確さだとか、納得感や合理性のある指示などが求められます。

    なので、これまで学生さん主体の職場ではうまくやれていた店長が、別の店舗に移ればうまくいかなくなるということもあるでしょう。ダイバーシティが進んだ職場であればあるほど、その辺りの難しさがあるということも伝えておきたいです。でも、外国人だろうとシニアであろうと、マネジメントの土台の部分は同じなんですよ。そこにそれぞれに対応するテクニックが乗っていて、そのコミュニケーションのテクニカルな部分を知らないと損をするというだけのことなんですが、その土台とプラスアルファのテクニック、それがまだうまく言語化されていないんですよね。



    平賀

    それを分かりやすく体系立てて、店長さんや採用担当の方たちに伝えていくこともわれわれの役目かもしれませんね。スタッフの雇用形態で「非正規」と「正規」とに分けることのナンセンスさにも気付いてほしいです。今「非正規」と言われている人たちが今後はメインの労働力になってくるわけですから。



    渋谷

    そう思います。全ての人が笑顔で働ける職場が増えるといいなと思います。

    でも本当に、都心にある飲食店なんて、日本で一番ダイバーシティ・マネジメントを求められている職場ですよね。外国人はいる、主婦はいる、学生はいる、シニアもいる、フリーターもいる、高校生もいる。こんなに多様なスタッフがいる職場のマネジメントは、われわれほとんどの社会人は経験していないですよ。

    求人広告の営業マネージャーの方がよっぽどラクです(笑)。



    平賀

    おっしゃる通りです(笑)。



    渋谷

    そんな中で現場のトップを任される店長さんの負担の大きさと、そこへのサポートの薄さというのが構造的におかしいと、早く経営側も現場も気付かないといけないですし、われわれはそれを改善していくための貢献を、これからも考えていきたいですね。



    平賀

    そうですね。今日は非常に共感できる、そしてとても参考になる具体的なお話が伺えて濃密な時間が持てました。今後もまたぜひ、お話を聞かせてください。



    渋谷

    こちらこそ有意義な時間をありがとうございました。


    ◆プロフィール

    渋谷和久(しぶや かずひさ)

    株式会社パーソル総合研究所
    代表取締役社長兼 パーソルホールディングス株式会社 グループ営業本部長

    ◆本件に関するお問い合わせ先

    ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)
    担当 :和田
     ※お問い合わせは、お問い合わせフォームからお願いいたします。