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ツナグ働き方研究所

03 COLUMN2019.07.16

  • コラム

    【店長応援企画・店長のミカタ】観音坂 鳥幸・鈴木志摩さん

    おもてなしの国ニッポン。その世界最高峰のサービス力を支えるのは、間違いなく現場を仕切る店長だ。「飲食業界」を牽引する主役たちを、どのように支援していくのか。この命題は非常に重要なイシューだ。

    今回は、今年2回目の「S1サーバーグランプリ(※)」受賞者インタビューをお届けする。見事、審査員特別賞を受賞された「観音坂 鳥幸」の鈴木志麻さんだ。グランプリを受賞した「燗アガリ」の高橋さんとも親交がある。高橋さんが新卒で飲食の道に飛び込んだのとは対照的に、鈴木さんはいろいろな職務経験を経たのち、正社員のSVという地位を捨て、アルバイトから焼き鳥職人を志した。その覚悟から湧き出るエネルギーはホンモノだった。


    ※S1サーバーグランプリとは


    NPO法人「繁盛店への道」が主催する日本一の「ベストサーバー」を選ぶ大会。「あの店に行けばあの人に会える」と思ってもらえるようなサーバーを輩出していくために2005年から開催され、今年で14回目を迎えた。全国から約700名のサーバーがエントリー。北海道、東北、関東、北信越、東海、関西、中国、四国、九州、沖縄の10地区で約1年間に渡り、1次審査・2次審査そして地区大会を開催。合計12名のファイナリストが全国大会に集う。サービス技術のレベルアップだけでなく、大会を通じて他店のサーバーとの交流や情報交換など、サーバーにとって様々な気づきや刺激を受ける場としても注目されている。

    https://hanjyoten.org/


    結婚と出産を経て初めて足を踏み入れた飲食業界

    平賀

    鈴木さんは今年のS1サーバーグランプリで見事、審査員特別賞を受賞されましたが、驚くべきことに、初のエントリーだったとか。



    鈴木

    そうなんです。そもそも「観音坂鳥幸」にアルバイトとして入社したのが2年前で。



    平賀

    それ以前はどんなお仕事をされていたんですか?



    鈴木

    商業高校を卒業後に銀行に就職して、その後、玩具メーカーに転職しました。それからトラックのドライバーとして働いて、結婚した後は同じ会社で事務の仕事に就きました。なので飲食業に携わるようになったのは随分後からなんです。出産を機に専業主婦になって、その後もう一度働こうと思った時に、初めて飲食で働くことを考えました。



    平賀

    それがこの「鳥幸」ですか?



    鈴木

    いえ。最初は別のファストフードのお店でパートとして働きはじめて、そこで10年ほど勤めました。働き始めて2年ほどで、パートという立場のままではあるのですが店長を任されることになったんです。



    平賀

    えっ?それはすごい大抜擢なのでは?



    鈴木

    もともといた店長さんが病気になってしまって。そこで私に白羽の矢が立ったといういきさつでした。店長になった3ヶ月後には、スーパーバイザーになっていました(笑)。ちょうど出店ラッシュの波もあり、フランチャイズのトレーナーという立場も兼任するようになったんです。



    平賀

    そこでずっと働き続けるという選択肢もあったと思います。次なる選択肢の中で現在の「観音坂鳥幸」で働くことを選んだのはどんな理由だったんですか?



    鈴木

    単純に焼き鳥が好きで。自分の夢を考えたときに、晩年は小さくてもいいので自分でお店をやっていたいと思ったんですよね。そんな思いで求人情報を探している中で、アルバイトでも研修体制が整っているというこのお店に惹かれました。



    平賀

    また一から、アルバイトとしてのスタートになったわけですが、ためらいはなかったんですか?



    鈴木

    私が今やりたいのはこれ、という強い意思があったので、雇用形態はまったく気にしていませんでした。むしろ一から教えてもらえるのがアルバイトの特権ですから(笑)。


    「ここを選んでよかった」と思ってもらえるように入店時の挨拶を大切にする

    平賀

    そして入社して1年でS1に出場するくらい、社内でも認められる存在になったわけですよね。



    鈴木

    当時の店長にすすめられて出場したんですが、ちょうど社内でNo.1グランプリというのをやっていて、私の名前を挙げてくださる方が多くいたのか、アルバイトのMVPをいただいたんですね。それがS1にもチャレンジするきっかけでした。



    平賀

    ご自身で評価するのは難しいかもしれませんが、鈴木さんの接客のストロングポイントは、どういうところにあると思いますか?



    鈴木

    お客様との会話は大切にしていますね。マニュアルにある言葉以外のお話をします。特に大切にしているのは最初の挨拶です。



    平賀

    入店時の挨拶ですか?



    鈴木

    そうですね。いろんなタイミングでの声がけがありますが、最初は特に大事にしています。初めて来店される方にとっては、お店の扉をくぐる時は期待と不安が入り交じるものだと思うんです。だから、最初に「ここを選んでよかった」と思ってもらえるところから始めたいなと。



    平賀

    特に予約をして来る人だと、事前にお店の情報を調べて、評価が高いから選んで足を運ぶという人が多いでしょうしね。その期待値を裏切らないことが大切ですよね。



    鈴木

    そうなんです。せっかく来ていただいて、そこからの2〜3時間を気持ちよく過ごしてもらいたいので。毎回毎回サプライズを感じてもらうことはできないかもしれないですが、うちで過ごす時間が心に残るものになるようにと思っています。



    平賀

    サプライズを仕掛けるにしても、お客様の情報が必要ですよね。誕生日とかお祝いとか、予約時に伝えてくれる人ばかりじゃないですし。



    鈴木

    例えばお手荷物でプレゼントらしいものがあったら、「今日は何かのお祝いですか?」と聞くこともできますし、乾杯の時の会話とかで「おめでとう」っていう言葉が聞こえてきたら、どんなお祝いなのか尋ねてみるとか。



    平賀

    なるほど。お客様の挙動から得られる情報はたくさんあるわけですね。その状況把握能力がS1でも存分に発揮されていたと思います。


    結局、自分自身が楽しんで接客をしていないとお客様にも伝わらない

    平賀

    現在は「トレーナー」として、後進の指導を担う立場にまでなったわけですが。



    鈴木

    S1の全国大会に出る直前くらいにそういうお話をしていて。でも自分としては焼き鳥職人の道も進んでいきたいですし、現場感も感じていたいという思いはあるので、店舗勤務も続けながらやらせていただいています。



    平賀

    新人スタッフにとっては、鈴木さんの接客を店舗でリアルに見られるというのもとても勉強になるでしょうしね。具体的にはどんなことを教えていますか?



    鈴木

    端的に言うと、「気配り」「心配り」を思い切って行動に起こすことだと伝えています。気づきがあっても、それを形にするには行動を起こすことが必要だと。



    平賀

    若い世代の子たちは、どんどんリアルコミュニケーション、対面での距離感に苦手意識が高まっているように思います。鈴木さんはそのあたりはどう感じていますか?



    鈴木

    その対面の距離感を一緒に楽しめる、好きになってもらうように、上司や先輩が見せていかないといけないと思っています。だからこそ、まずは私自身が楽しんでいないと説得力がないと思うんです(笑)。



    平賀

    なるほど(笑)。それはすごく共感できますね。



    鈴木

    例えば電車でお年寄りに席を譲ろうと思ったのに、隣の人が自分より先に立って譲った時とか、別に気にすることはないんですけど「先にやられて悔しい。次は私が譲ろう」みたいな気持ちになるときってありますよね?そういう気持ちが広がっていくといいなと思うんです。だから仕事でもマニュアルにあるからこう動く、ということではなくて、心から自分が「こうしたい」と思って動くから、お客様に喜んでもらえるんだと思います。



    平賀

    心のこもった接客って、そういうことですよね。そうか、鈴木さんの行動原理は、常に「誰かを幸せにしたい」っていうところに基づいているんですね。



    鈴木

    今の世の中、「知らない人と口をきいてはダメ」とか、幼い頃からよく言われますよね。それはもちろんそうなんですけど、お店の中でなら、どんどん「知らない人」と会話していいし、そこで若いスタッフにも大いに引き出しを増やしていってほしいんですよね。だから、私が教えた通りにやるのではなくて、一人一人が言葉ひとつとっても、自分の身の丈に合わせた接客で実践していってほしいんです。


    飲食のコミュニケーションで「日本のファンを増やす」

    平賀

    自主性を重んじると、一方ではミスも出てきませんか?



    鈴木

    そうですね。でもネガティブな意味ではなく、失敗は大いにしてほしいと思います。もしそれでお客様が気分を害することがあっても、そこをフォローするのが私たちの役目でもありますから。まずはやってみる。その後で、「こうしていればもっとよかった」っていうことを考えてほしいです。



    平賀

    勇気を出してアクションできるようになることが、まずは大事なのかもしれませんね。



    鈴木

    そうなんです。それをフォローする先輩がいて、そしてその子が次に先輩になった時には、同じように後輩を育てていくーーそういう文化が根付いていくといいと思います。



    平賀

    そういう風土を持っているこの会社だからこそ、鈴木さんも楽しく働けているんですよね。インバウンドのゲストが増加する中で、日本のおもてなし文化を発信する意味でも、いま接客は非常に重要だと思いますし、そうした実践が飲食業界の未来につながるような気がします。



    鈴木

    まさに今、私がテーマに掲げているのは「日本のファンを増やす」ということなんです。よく英語でのコミュニケーションが必要だと言われますが、私は必ずしもそうは思っていなくて。言葉の壁は、翻訳ツールが進化してきていて、それで十分にクリアできるんですよね。そこにどれだけ、表情や心配りを添えてもてなすことができるか、というところを最近はよく考えています。



    平賀

    言葉はツールでしかなくて、やはり気持ちが大事だということですね。ある意味、観光で訪れた外国人ゲストに日本を印象付ける、重要な仕事なんですよね、飲食業は。



    鈴木

    本当にそう思います。先日いらしてくれた外国人の方が、食事の最後に「日本でレストランを選ぶのは簡単ではないけれど、今日は最高のチョイスができた」とおっしゃってくれて、すごく嬉しかったです。



    平賀

    飲食を通じて、様々なメッセージを発信する、その役割を担っているという意識が自然と備わっているのが素晴らしいと思います。店舗を超えて、その思いを世の中に広く伝えていきたいという展望もあるのではないですか?



    鈴木

    そうですね。今日こうして取材をしていただいていることもそうですし、もちろんS1に出ることにも、そういう思いがベースにありました。スピーカーのひとりとして、多くの人と一緒に飲食業界をよくしていきたいと思っています。



    平賀

    同じ仲間ですもんね。



    鈴木

    私自身がそういう場で、新たな刺激をいただいているということも大きいです。特にS1を通じて知り合った、「絶好調」の高橋さんとの出会いは強力で、私がもう一度人材教育に携わりたいと思えたのは彼女のおかげなんです。



    平賀

    そうした外部の人との交流から、新しいヒントや可能性の広がりを感じることって多いですよね。僕自身も、ここで様々な方と語り合うことで、いろいろと刺激を受けています。ともに日本の飲食業界を盛り立てていけるといいですね。本日はありがとうございました。


    * * *



    それにしても鈴木さんは、エネルギッシュな人だった。小難しく考えることなく、やりたいことに尽き進んでいく。紆余曲折といってもいいそのキャリアのベースには、シンプルでポジティブな熱があるのだ。

    屈託なく、どこまでも明るく、前を見て接客について語る彼女から、こちらまでがポジティブな気持ちをおすそ分けしてもらった。

    「観音坂鳥幸」を訪れるお客さんも、きっとこの元気をもらって、店を後にするんだろう。今度はお客として会いに行こう。


    ◆本編資料(PDF)もしくは参考サイト(URL)はこちらから

    東京レストランツファクトリー株式会社

    S1サーバーグランプリ

    ◆プロフィール

    鈴木 志麻(すずき しま)

    東京レストランツファクトリー株式会社
    人事部 教育・研修担当チーフホスピタリティトレーナー

    ◆本件に関するお問い合わせ先

    ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)
    担当 :和田
     ※お問い合わせは、お問い合わせフォームからお願いいたします。