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ツナグ働き方研究所

03 COLUMN2019.03.15

  • コラム

    【店長応援企画・店長のミカタ】
    販促マーケティングと採用メソッドのパラダイムチェンジを

    おもてなしの国ニッポン。その世界最高峰のサービス力を支えるのは、間違いなく現場を仕切る店長だ。「飲食業界」を牽引する主役たちを、どのように支援していくのか。この命題は非常に重要なイシューだ。
    今回は、飲食業界を経営する上で「武器」となるであろう書籍を出版した著者の対談だ。一人は竹田クニ氏。リクルートでグルメ領域の仕事に従事、最近「外食マーケティングの極意」を改訂出版した。もう一人は、何を隠そう、この連載のホストであるワタクシ平賀だ。2月に、現場の店長に捧げる採用のワザを集めた「神採用メソッド」を上梓した。
    われわれに通底する思いは、パラダイムチェンジ。20世紀とは「真逆の時代」における飲食店の在り方を問う。そんなお互いの思いをぶつけ合ってみた。
    ステレオタイプな思考が市場を見誤らせる

    平賀

    竹田さん、てゆうかクニさんでいいですよね。笑。『外食マーケティングの極意』の初版を上梓されたのは2016年。どういったきっかけでこの本を出されたんですか?



    竹田

    平賀も知ってるように、リクルートで2011年から外食産業にまつわる仕事をしていまして。当時から「10年続くお店は全体の10%」という定説があってね。その時から、外食にもマーケティングが必要だと感じていたんです。



    平賀

    なるほど。そして今回さらに、その増補改訂版が出たわけですが。



    竹田

    やっぱり2年も経てば市場も変わっているし。特にインターネット環境は大きく変化していますよね。まずはそのあたりをアップデートしたいなと。それから消費者の価値観がこう変わっていくだろうという予測が、自分の中でも少し変化というか、進化した部分があって。



    平賀

    そもそもクニさんが言う「外食マーケティングの必然性」とは、どういうところにあるのでしょう?



    竹田

    今の時代は高度経済成長期やバブル期とも違って、これから市場は縮小していき、労働人口も減少していく時代です。



    平賀

    真逆の時代ですもんね。



    竹田

    そんな時代に20世紀の成功体験は通用しませんよね。だから業界全体がパラダイムチェンジしなきゃいけない。そのためには「マーケティング思考」が必要なんです。



    平賀

    「見立て」て、「仕立て」て、「動かす」という実践ですね。



    竹田

    われわれの出身企業であるリクルートではよく使っていた言葉ですけどね(笑)。



    平賀

    そうですね(笑)。



    竹田

    特に「見立て」が大事。市場が成長していて、労働力も十分な環境下にあった70年代や80年代なら、人気店や繁盛店のやり方を真似て考えればよかったんです。それがうまくいけばまた店舗数を増やしていくという戦略でよい。でも今は全く違う市場環境。「見立て」をちゃんとやらないと失敗します。



    平賀

    消費の価値観が大きく変わってきていますよね。



    竹田

    価値観の変化も多様で。ステレオタイプな見方に流されちゃいけない。例えば、「今の若者は酒を飲まない」みたいな話があるけど、本当に?という疑いを持つべきで。



    平賀

    若者の中にも飲む人はいっぱいいるし、若者でにぎわっている酒場もたくさんある。



    竹田

    同様に「シニアだからあっさりしたものが好まれる」っていうのも、本当にそう?って。



    平賀

    確かに、元気なシニアって、めっちゃ肉食べてますよね(笑)。



    竹田

    でしょ? だからこれまでの定説やトレンドをベースに思考することはめちゃめちゃ危険なんです。



    平賀

    本の中に「おひとりさま第一位は武蔵小杉」という解説があって。意外でしたけど、裏付けもしっかりされていて、非常に納得しました。



    竹田

    街によって住む人の傾向が違うので、エリアによって外食産業のニーズも違いますよね。それを毎年調査してるんですけど、武蔵小杉は都心にも近いし、意外と所得高めの30代独身者が多いんですよ。だからその人たちがひとりでごはんを食べる、いわゆる「一人メシ」のニーズが高いんです。



    平賀

    武蔵小杉といえば、林立するタワーマンションに住むファミリー層イメージ。ほんと意外でした。



    竹田

    巣鴨だって、20代の一人メシが多い。地蔵通り商店街ではなく、駅近の賃貸物件には若者がたくさん住んでいます。だから、そこでお一人様向けの焼肉店が繁盛したりする。



    平賀

    なるほど。ステレオタイプの思考がいかに本質を見誤るかという、分かりやすい例ですね。



    竹田

    ステレオタイプ的なものの見方や過去の経験則で「見立て」をすると確実に間違えます。


    社会貢献や環境保護につながる「イミ消費」理解の重要性

    平賀

    著書にも書かれている「イミ消費」という価値観も、今の時代を読み解く大事なキーワードですよね。



    竹田

    例えば地域貢献、社会貢献、他者支援、環境保護などにつながる消費に満足感を得るという傾向。



    平賀

    「モノ」から「コト」、そして「イミ」へと消費の価値観が変遷していったのは、どういう背景からだと考えていますか?



    竹田

    「モノ消費」の時代は「三種の神器」という言葉に象徴されるように、50年代後半から70年代にかけて、家電など生活に必要なモノがまだまだ圧倒的に足りていなかった時代ですよね。電化製品、家電、クルマ、部屋のインテリア、生活スタイル、ファッションまで、洋風な「モノ」を手に入れる事が近代化とイコールだった時代です。特に大量生産・大量消費のアメリカの影響が大きかった。



    平賀

    雑誌『POPEYE』が創刊されたのが1976年。確かにその頃はアメリカへの憧れが強い時代。



    竹田

    景気がよくなってバブル期へと進んでいくと、「モノ」が満たされるにつれ、人との差別化が始まる。いつの間にか高級なヨーロッパのブランドに憧れるようになった。



    平賀

    ジーンズと言えばリーバイスだったのに、突然アルマーニのジーンズが流行ったり(笑)。それが「コト消費」へと移り変わるのは?



    竹田

    バブル崩壊後、景気が低迷し「モノ」が売れなくなる。これからは「モノ」を売るのではなく、「体験」を売る事が重要だ、となった。それが「コト消費」と言われた。わかりやすい例で言うと「女子会」。女子だけで集まる事が目的。



    平賀

    ミクシィ以降の「オフ会」とかもそうですね。

    その先の「イミ消費」とは具体的にどういうものなんでしょう。



    竹田

    分かりやすいのは「ふるさと納税」とか、復興支援の消費ですね。また、森永製菓が行っているフェアトレードのチョコレートもイミ消費。そのチョコの売り上げからカカオの原産国の教育支援に投資するという、地球市民としてあるべき国際貢献に「イミ」がある。



    平賀

    なるほど。素材の選び方も一つの「イミ」として、メッセージにつながっていくってことか。



    竹田

    「契約牧場から銘柄牛の希少な部位を提供します」というのはモノ消費だけど、「売上の一部を牧場の環境改善の為に寄付します」というのはイミ消費になる。


    スタッフがイキイキしている職場は、働く「イミ」を提供できている

    平賀

    「イミ」でいくと、働く人も給与や自己実現といったことだけでなく、社会貢献的な「イミ」のある働き方をしたいという人たちが、確かに増えていると感じます。



    竹田

    お、働く方面の話になってきましたね。このへんで攻守交替しますか。



    平賀

    ありがとうございます(笑)。



    竹田

    居酒屋甲子園で優勝した居酒屋の新入社員のエピソードなんだけど。その子は海洋大学を卒業して、その居酒屋に就職したんですよね。



    平賀

    そこに就職しようと思った「イミ」があるってこと?



    竹田

    そう。理由を聞くと、「私は海が大好きで、だから海を守ることに一生懸命なこの会社が好きなんです」と言っていました。この会社って、本当に海を守ろうというビジョンを会社が示しているんだよね。



    平賀

    サービスでお客様を満足させることはもちろんだけど、自分が働くことで海を守ることもできる。スタッフがそこで働く意義を感じられるって、今の時代、すごく大切だと思います。



    竹田

    今回、出版した『神採用メソッド』とも共通する概念なのかな。



    平賀

    そうですね。根底では共通していると思います。



    竹田

    もう少し具体的に言うと?



    平賀

    基本的には現場スタッフの具体的な採用ノウハウを扱った本なんです。実は、空前の人手不足といわれる昨今でも、まったく採用に困っていないお店や職場があるんです。そういった採用の勝ち組が実践するノウハウの中でも、意外とすぐにマネできたり、現場の判断で簡単に実行できるものを「神ワザ」として30個厳選しました。で、そういう「神ワザ」を持っている採用の勝ち組に共通するのは、実はスタッフがイキイキと働いているという点。それこそ働く「イミ」をちゃんと提供できているんだと思うんです。



    竹田

    根底では共通している、というのは、そういうことなんだね。



    平賀

    ビジョナリーな経営ができていて、スタッフもそこで働く意義を感じられれば、なかなか人が辞めない。逆に「あそこはいいお店だ」という評判が立てば、働きたい人は放っておいても集まってきます。



    竹田

    そういう店舗は、きちんと働き手をマーケティングできているっていうことだと思います。



    平賀

    職場作りがちゃんとできていれば採用にお金はかからないんですよ。親御さんが「ここでうちの子どもを働かせてくれない」とお願いしてくるような店舗もあるわけです。


    20世紀に有効だったマニュアルやテクニックを盲信するのは危険

    平賀

    クニさんから見て、飲食産業は人材採用の面から、どうパラダイムチェンジしていくべきだと考えてますか?



    竹田

    そうですね。例えば今、総合居酒屋は飽和状態で、「なんでもある」けど「価格も料理のクオリティもそれなり」というフォーマットにみんな飽き始めているわけですよね。顧客の奪い合い、価格競争、合理化、その結果、クオリティが下がるという悪循環を繰り返して生産性は下がる一方。



    平賀

    確かに。



    竹田

    そろそろネジを逆に回さないといけないのは、人事についても同じでしょ。過去に経験したことがないくらいに労働力が減少しているわけで。だから、外国人労働者の受け入れは喜ばしいことなんですよ。



    平賀

    今回の法改正による「特定技能」という在留資格では、飲食業で働くことも認められましたからね。



    竹田

    もはや「こんな仕事はバイトにやらせておけばいい」「日本人スタッフが取れないから、仕方なく外国人スタッフで」とか、そもそもそういう考え方をしている企業は間違いなくダメになっていくでしょうね。



    平賀

    現場のスタッフを「人材」というより「労働力」としか見ていないというのが問題だと感じていて。どうせアルバイトだから、という「どうせ」という旧態依然とした感覚が、残っているんじゃないかと。



    竹田

    それは同意見ですね。そのパラダイムは、おおいに変えていかないといけないんです。これだけ労働力の需供のバランスが偏っていると、簡単な理由で人って辞めるし、代わりの職場なんていくらでもある時代ですからね。



    平賀

    今や面接段階から、動機付けを行っていかないと、簡単に他の職場に行かれてしまう。それでも、まだまだ「こっちがスタッフを選んでいる」という感覚がなくならないというか。



    竹田

    応募するほうも3〜4箇所は平気で同時に応募してるでしょうし、そこでそれぞれの対応は確実に見られてますよね。面接前にお客さんとしてお店を見にいくと聞くし。



    平賀

    2人に1人は下見に行くというデータもあります。



    竹田

    やっぱり。今日こうやって話をしていて、改めて感じたんだけど、20世紀に成功体験を盲信するとかなりマズイと思いますね。



    平賀

    そういった意味でも、ヒトに対しても、パラダイムチェンジが重要なんだと思うんですよね。



    竹田

    働く目的ややりがいなどは人それぞれで、そういう一人ひとりが力を合わせて価値を創りだしていく。その設計図を経営者がうまく作らないといけない。



    平賀

    おっしゃる通りですね。そのパラダイムチェンジのために、マーケティングという思考が必要。ステレオタイプの思い込みではなく、ニーズの本質をつかみ取った企業こそが、採用も集客も成功へと導くことができるんですよね。



    竹田

    まさに今できているベスト・プラクティスから何を学ぶかというのが大事な気がします。


    * * *



    消費者が今何を大事にしているかをフラットに見立てて、それをどういう商品やサービスの開発に結びつけるかということが、サスティナブルな繁盛につながるのではないか。竹田クニ氏は一貫して、そう主張していた。その思考に完全に賛同する。

    販促マーケティングと採用メソッドのパラダイムチェンジを、提言するわれわれは、当事者としては飲食業界に携わったことのない「部外者」だ。「よそ者が何を言ってるんだ」と思われるよねと、二人で話したりもした。しかし、外からの客観的な視点が重要であると信じる。これからも、僭越ながら提言をさせていただこうと思う。


    ◆本編資料(PDF)もしくは参考サイト(URL)はこちらから

    『リクルートの伝道師が説く 外食マーケティングの極意』(言視舎)

    ◆プロフィール

    竹田クニ(たけだ くに)

    株式会社ケイノーツ
    代表取締役

    ◆本件に関するお問い合わせ先

    ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)
    担当 :和田
     ※お問い合わせは、お問い合わせフォームからお願いいたします。