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ツナグ働き方研究所

【多様な働き方を研究するコラム】サマータイム導入の功罪

欧米で定着している「サマータイム」のように、仕事の効率化と業務後の余暇の充実を。

2015年3月27日、安倍首相は閣僚懇談会で、今夏に中央官庁の国家公務員の就業開始時間を1~2時間程度早めるよう、各閣僚に指示しました。

首相は「明るい時間が長い夏の間は、朝早くから働き始め、夕方は家族らと過ごせるようライフスタイル変革に取り組む」と強調。民間企業や地方自治体などにも導入を勧め、レジャーや外食分野などで新たな商機が生まれることも期待しています。
朝型勤務は定着するのか

今、「サマータイム」や「朝型勤務」の議論がさかんです。


ただし、このふたつを混同として捉えてはいけないのではないでしょうか。サマータイムは、緯度が高く夏の日照時間が長い欧米諸国などで多く導入されていますが、要は1日の活動時間を長くする仕組みです。時計の針自体を進めるので、全体的に朝型になる。日照時間=活動時間の増加により、余暇の充実や経済の活性化を促すメリットはあるのでしょうが、サマータイムが即仕事の効率化につながるわけではありません。


それどころか、もともと定時に帰る意識の低い日本においては、明るいうちに帰らせず労働時間(残業)を増やす上、最悪サービス残業の温床になりかねない、という指摘もあるくらいです。


有効に使える活動時間をさらに仕事に費やしてしまい、逆に労働時間が増えてしまうのでは、元も子もありません。


実は、日本においても「サマータイム」が導入されたことがありました。太平洋戦争で敗北し連合軍により占領統治された時期に、1948年4月28日に公布された夏時刻法にもとづいて、サマータイムを実施していたのです。1951年に講和条約が締結され、翌1952年4月11日に夏時刻法は廃止。平成に入ってからも、省エネ・地球温暖化対策・経済効果の文脈からしばしば議論されているが、導入に至っていません。


日本列島は東西に細長く、東日本と西日本で日の出・日の入りの時刻に大きな差があり、全国一律にサマータイムを導入するには不適という地形的な観点からの反対意見もありますが、前述の残業増加への懸念も大きな要因といえるのではないでしょうか。


「夜残業」から「朝残業」シフト

昨年、厚生労働省は「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」に基づく指針で、一定時刻以降の残業は禁止し、終わらなかった仕事は早朝にまわす「朝型勤務」を推奨することを検討しました。もし実現すれば、ダラダラ残業をよしとする風土が変わり、朝から効率よく仕事をする人が増えるかもしれないません。そして「朝型勤務」を実践する企業も増えてきています。


伊藤忠商事は、「朝型勤務」制度を正式に始めたと報道にありました。同社では、22時以降の深夜勤務を「禁止」、20時以降の勤務も「原則禁止」。その代わりに、やりきれなかった仕事を朝にまわす「朝残業」制度を導入したとのこと。


富士ゼロックスは、午後8時以降の残業を原則禁止とする新制度を導入。直属の上司の許可が無ければ午後8時以降の残業を禁じ、仕事が残った場合は翌日午前7時からの早朝勤務を促すそうです。


伊藤忠商事のホームページには、制度を利用して「家族と過ごす時間が増えた」と語る男性社員の声が紹介されていました。朝5時に起き、ジムで運動、7時半に社内託児所へ子供を預け7時40分には出社。18時半には、再び社内託児所に子供を迎えに行き、家族一緒に夕食をとり、21時から勉強や読書などの自己啓発までこなし、23時に就寝。仕事も、家庭も、自己啓発も、すべて揃った『理想的なライフスタイル』のようにも思える事例です。


このように「朝型勤務、絶賛支援。みんなで早く帰ろう!」とか、「早朝始業はオススメ。俺も自宅で5時から仕事してるけど、仕事の効率が上がり、夜のダラダラがなくなった」など、朝から仕事をするメリットを挙げる人もいるが、「朝早くなっても帰りの時間は変わらず、長時間労働化がオチでは?」と、サマータイム議論と同様の反論も少なくありません。また「朝7時半に出社するとしたら、何時に保育園に預ければいいの?」と、早朝から対応できる託児所が少ないことを指摘する向きもあります。


確かに、前出の伊藤忠のように社内託児序所が整備されているような大企業では可能かもしれませんが、一般企業に勤務する人にとって、預ける時間問題は深刻です。


「朝型勤務」へのインセンティブがポイント

サマータイム議論にしても朝型勤務シフトにしても、結局のところ大切なのが、朝働くなら、夜働かないという打ち手ではないでしょうか。朝早くなっても帰りの時間は変わらず長時間労働化を抑止するためには、夜働くことを禁止することに加え、朝働いたほうがいいという「にんじん」をちゃんと整備する必要があります。


伊藤忠の場合、「にんじん」として割増賃金を変更しました。現在、午後10時から午前5時までの深夜勤務に対して支給している50%の割増賃金を、早朝勤務にも適用。午前5時から同9時までの時間外手当の割増分を25%から50%に引き上げています。また、朝8時までに始業した社員には、「にんじん」ではなく、Dole社ブランドのバナナやヨーグルトを無料で支給するとのこと。


朝型勤務がプラスされるのではなく、朝型勤務へとシフトさせてはじめて、首相の唱える「朝早くから働き始め、夕方は家族らと過ごせるようライフスタイル変革」が実現するのではないでしょうか。


◆本件に関するお問い合わせ先

ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)
担当 :和田
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