Column

2019.11.15

【店長応援企画・店長のミカタ】hachidori伴貴史さん

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おもてなしの国ニッポン。その世界最高峰のサービス力を支えるのは、間違いなく現場を仕切る店長だ。飲食業界を牽引する主役たちを、どのように支援していくのか。その大きなイシューとして、店長がいかに本業に専念できるかという本質的なテーマがある。
今回は、その命題に真っすぐに取り組むベンチャー経営者に話を聞いた。「労働の効率化と最適化」をミッションと課し、hachidoriというサービスを立上げた伴貴史氏。機械に任せられるところは任せ、本来、店長がやるべき業績拡大やスタッフマネジメントに注力してほしい。そんな思いからセカンドサービスとしてCASTは開発された。立上げの経緯、今後の展望についておおいに語ってもらった。

労働の効率化と最適化を目指しhachidoriは誕生した

平賀
まずはhachidoriという名前の由来を教えてください。
諸説ありまして(笑)。対外的に伝えているところでいくと、アンデス山脈に伝わる『ハチドリのひとしずく』という童話があって。どういう話かというと、ある日山火事が起こって、動物たちはみんな逃げ出すなかで、ハチドリだけは近くの湖から自分の口に少しずつ水をふくんで、火を消そうとするんです。まわりの動物たちは「そんな少しの水で火が消えるわけがない」と嘲笑するんですけど、ハチドリは「私はいま自分ができることをやっているだけ」だと。つまり、世の中に対してどれだけインパクトを与えられるかはわからないけど、目の前の課題解決のために少しでも寄与できたらいいと、そういう思いがあったんです。
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平賀
なるほど。そしてhachidoriは、今度は飲食店などでシフト管理、勤怠管理を行うスマートフォン用の「CAST」というアプリケーション開発へとつながっていくわけですが、ここへ至るにはどんなきっかけが?
まず、150人くらいアルバイトさんやパートさんを雇用しているとある工場があって、そこでhachidoriを利用していただいていたんです。もともと彼らはLINE上でグループを作って、そこで「何日の何時から何時まで入れます」とか、スケジュール管理をしていたんですね。リーダークラスは大量に流れてくるLINEをスクロールしながら、それを紙なりエクセルなりに転記していってシフトを作成していく…、それで1日が終わってしまうような状態でした。それをなんとかしてほしいということでチャットボットを提供したんです。それによって、シフトのデータや勤怠データのやりとりがスムーズになったと好評をいただいて。
平賀
確かにシフト管理は、非常に時間を取られる作業です。それは規模の小さい飲食店の経営者も同じ。
そうなんですよね。僕は飲みに行ったり、外食したりするのが大好きで、よく夜中にお店にいくと、オーナーと「最近どう?」みたいな話にもなるんですね。そこで、さっきの工場の話なんかをして「こういうサービスを最近やってるよ」なんて話してると、飲食店のオーナーも「うちもそうやってシフトを管理してるけど、転記ミスもあって苦労している」と。「そのシステムを入れたい」とおっしゃってくれて。
平賀
とは言え、規模の小さい飲食店が導入すると、コストがすごくかかる、という懸念もありますよね。
hachidoriのサービスは、実際さっきの工場の場合、月額20万〜30万円くらいのコストだったので、規模にもよりますが、飲食店ではとても払える金額ではないと思うんです。そこに僕も無力感を感じたんですよ。テクノロジーの力で効率化、最適化を推し進めるためにいまの会社を起こしたのに、自分たちがサービスを提供できるのは、リテラシーも持っていて、資金も十分にある企業だけでしかなくて、そこにやるせなさを感じたんです。それが2018年の2月くらいのことだったと思います。CASTがリリースされたのはその8ヶ月後くらいですね。
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アルバイトさんや規模の小さい飲食店から余計なお金は取りたくない

平賀
そこがすごいと思うんですよね。リテラシーも資金も潤沢とは言えない飲食店のために、そこで現実的に使えるサービスを考える。その哲学が素晴らしいと思います。
どうやってこのサービスを作っていけばいいのかと考えたときに、LINEやFacebookのプラットフォームに乗ってしまえば当然単価は上がってしまう。それならうちだけでクローズする安価なサービスを作るほかないなと。そのひとつがチャットコミュニケーションツールでした。Slackやチャットワークを入れるほどのコストは飲食店さんにはないとして、まずはそこを無料にしていこうというところから考えました。
平賀
とは言え、hachidoriさんとしても会社として利益は出さないといけないわけですよね。
そうです。その収益モデルには頭をひねりました。コンシューマの中で一番お金を持っていないのがアルバイトさんで、ビジネスサイドではスモールミディアムなビジネスを展開している店舗ほど資金は少ない。その両者から、いかにお金を取らずに運用していくかというのが重要だと考えていたので。そこで、シフト管理とコミュニケーションのためのツールとして、ひとつのアプリケーションを提供する──というところで課金させていただいています。
平賀
具体的にはどういう課金形態なんですか?
ひとりあたりのシフトに入っている時間に対して計算します。いまは1時間につき4円。限界額も設定してあって、ひとり頭で250円は超えないように上限を設けています。これには理由があるんです。いまはアルバイトも極端な売り手市場なので、明確に退職はしないまま在籍はしている、いわゆるゴーストバイトのような人たちがいっぱいいて、その頭数に対して一律に課金してしまうのは店舗の実態に則していないと思ったんですね。
平賀
ああ、それも素晴らしいですね。今後、より人が採用できない、シフトが埋まらないという状況になった場合、人数をできるだけ多く抱えて、それでなんとかまわしていこうという流れは大いにあります。頭数によって課金されてしまうと、余計コストがかかってしまうので。
そうなんです。人数での課金は店舗によっては相当な負担になってしまいますからね。
平賀
それにしても、コンシューマやスモールミディアムの企業に向けたサービスとして、そこからはできるだけお金を取らないという発想は、どういう哲学から来ているのか、もう少し詳しくお聞きしたいです。
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ベースとしてあるのは、やっぱり僕が飲食が好きな人間で、そこで働く人やオーナーの顔が見えているというのが大きいんでしょうね。オーナーさんと話せば、人材採用がどれだけ大変かっていうことや、店舗を運営していく苦労が見えてきて、そこから必要以上にお金を取ろうなんていう発想にはならないですよ。

辞めたらまたすぐ採用すればいいという意識を改革していく必要がある

平賀
採用にお金と労力をかけるより、良いお店を運営していくためにはもっと必要なことがあるという…。それも効率化の思想につながる部分ですよね。
そうですね。これを言ったら怒られるかもしれないけど、例えば求人メディアの掲載型課金の市場が最たる例としてあって、掲載料金を支払って「採用できませんでした」っていう結果もあるわけですよね。僕はお客さんの喜びと自分の喜びがイコールでありたいので、お客さんに喜んでもらえるしくみで自分たちも収益を得て、永続していけるサービスを運営していきたいんです。それに関わる社員のメンタルヘルスを考えても、それが一番健全だと思っています。
平賀
それこそ教育にもっと時間と費用をかけるとか。
そう思います。結局、リテンション(人材定着)を含めた採用単価だと思うので。たとえ「5万円で採用できました」と言っても「2日で辞めました」では、それはほぼ、お金が水泡に帰したということ。でも「5万で採用できて、2年間働いてくれました」なら、それは採用の成功というより、リテンション施策が圧倒的に奏功した結果だということですし、店舗さん、店長さんはもっとそこにフォーカスすべきで、我々としてはそのためのしくみを構築することが必要だなと思いました。
平賀
効率化と最適化によって職場に余裕が生まれれば、店舗とアルバイトの有機的なコミュニケーションは活発化するでしょうし、それがまた人材定着へとつながる好循環を生むんですよね。
いまある求人市場をなんとか圧縮して、店舗や企業はその浮いたコストを本来あるべきところに投資できるというしくみを弊社で作っていきたいです。それこそ新メニュー開発だって大切だし、飲食店にとって集客は命ですよね。でも、いまは集客にコストをかけられないくらいに採用にお金がかかってしまっていて、採用はしたけど集客はできてません、なのでお客さんが来ません、さてどうしましょうっていうスパイラルが増えていっているんです。ネガティブサイクルに入りすぎています。
平賀
まずは店舗のオーナーや店長が、そこに意識的になれるかどうか。
辞めたらまた採用すればいいという意識の人はまだ多いので、意識改革はほんとに必要です。うちはCASTのプラットフォームはバイトテックと称して運営していますが、いまの時代に則したモダンな採用方法を、アルバイトにも取り入れてほしいんです。その啓蒙のためのセミナーも必要かなと思っています。
平賀
いままでのやり方ではまずいという空気は出てきていますよね。なのでいいタイミングだと思います。従来型のメディア掲載主軸で行う採用は、お金を払ってすべてお任せでやってもらうという文化でした。だからダイレクトリクルーティングやスカウトでの採用は手間だという感覚になってしまうのはわかるんですよ。でもそこを脱却しなければ結果は出ない時代ですからね。
昔は任せておけば1〜2万円で採用できるいい時代だったんですよね。その当時に比べたらいまは採用単価も8〜9倍くらいに膨れ上がってきているのに、任せておけば採れるという意識は変わらない。採れないという時代がもうやってきているなかで、今こそプッシュ型の採用を始めるチャンスだと捉えています。売り手市場だからアルバイトさんが幸せかって言ったら全然そんなことないんですよね。より良いマッチングを実現させることが、店舗にもアルバイトさんにも幸せなことだと思うので、その最適化こそが我々の使命で、バイトテックを標榜するのも、その思想からです。うちのサービスを利用して離職率が下がったと評価してくださるお客様も多くて、それはとても嬉しいですね。
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平賀
煩雑な仕事は効率化を推し進めて、空いた時間で店長さんは本来やるべき仕事をやる。それで初めて、店舗でスタッフとの間に人間らしいコミュニケーションが生まれる、だからアルバイトさんも正当な評価を得られて長続きするっていう好循環。そうした健全な姿へと立ち返らせる、そのターニングポイントに、いままさに立たされているのかもしれません。今日はとてもいいお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。

*   *   *

伴さんは、人たらしだ。インタビューしているうちにグイグイ引き込まれていく。そう感じるのは、もちろん、彼の生まれ持つキャラもあるんだろう。しかし彼の視界、実現したい未来、そういうビジョンへの共感が湧き出てくるのだ。
彼のいう労働の効率化と最適化は、テックありきではなくテックによって、ヒトが活きる活かされる世界に他ならない。思わずインタビュー終わりに飲みの約束をしてしまった(笑)。

本件に関するお問い合わせ先

ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)担当 牧戸(まきと)
Tel:03-3501-0279
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プロフィール

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伴 貴史(ばん たかし)

hachidori株式会社 代表取締役社長
16歳で高認を取得して単身豪州に進学し、帰国後は早稲田大学政治経済学部に入学。卒業後、投資銀行で政府系案件を担当したのち、2015年にhachidori株式会社を創業。プログラミング不要のチャットボット開発ツール「hachidori」とアルバイトの課題を解決するバイトテックプラットフォーム「CAST」を運営。今月、即戦力アルバイトが採用できるサービス「CAST JOB」をリリース。

平賀充記(ひらがあつのり)

ツナグ働き方研究所 所長
1988年リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)に入社。「FromA」「FromA_NAVI」「タウンワーク」「とらばーゆ」「ガテン」などリクルートの主要求人媒体の全国統括編集長を歴任。 2014年株式会社ツナグ・ソリューションズ取締役に就任。2015年ツナグ働き方研究所を設立、所長に就任。2019年よりツナググループ・ホールディングス エグゼクティブフェロー就任。著書に『非正規って言うな!』『サービス業の正しい働き方改革・アルバイトが辞めない職場の作り方』(クロスメディアマーケティング)、『パート・アルバイトの応募が殺到!神採用メソッド』(かんき出版)、『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)。
平賀充記メディア出演・講演情報