
【多様な働き方を研究するコラム】流行語「爆買い」から雇用を考える
今回はツナグ働き方研究所所長の平賀より、同じく昨年の流行語大賞に選ばれた「爆買い」と雇用の関係をお話しいたします。
今回は、なにかと騒がしかった2015年を雇用面から振り返ってみましょう。
流行語にも取り上げられた「爆買い」。
観光庁によると、訪日中国人の旅行消費額は、9月までで1兆1千億円を超えて、すでに一昨年1年間の倍を突破していたとのことです。このインバウンドブームが採用市場に与えた影響は少なくありません。
おそらく、これまでで最も多くの在留中国人が積極的に採用された年だったのではないでしょうか。中国人観光客に中国人スタッフが接客対応するというのは確かに合理的な選択と言うか、当たり前のことのようにも思えますが、ひと昔まえまでは、外国人の採用自体が非常に限定的でした。というか、採用がうまくいかない時のセカンドチョイス、サードチョイスでした。就労ビザなどの基本的な制約条件はもちろんですが、言葉そのものだけでなく文化風土に根差した価値観が違う外国人スタッフとのコミュニケーションは、なにかと難しいという背景が最大のネックです。
現場の採用力学では、職場コミュニケーションの難易度が高まることを極端に嫌います。ただでさえ忙しい店長さんやマネージャーにとって少しでも負荷がかかる状況は避けたいという心理が働きがちですから、外国人だけでなく、自分たちより年上の主婦層やシニア層も、扱いにくいという理由で、長らく消極的な採用にとどまっていました。そういった状況の一部を、「爆買い」消費が打破してくれたのです。本業にプラスとなれば採用も進むというわけです。
同様な事例は他にも散見されます。長らく「男職場」だった家電量販店では、冷蔵庫、炊飯器、洗濯機などのいわゆるシロモノ家電コーナーで主婦採用ニーズが高まってきています。
確かに、購買の判断をするのが主婦なのだから同じ目線を持つ主婦スタッフのほうが接客シーンでも痒いところに手が届きます。また、独居老人向けのお弁当宅配サービスに力を入れるセブンイレブンは、この職種で積極的にシニア採用を展開しています。顧客が淋しいお年寄りなのだから、同年代のスタッフが届けてくれたほうが話し相手になってあげることもできて、サービスレベルが上がるのは間違いありません。
これは、顧客ターゲットやニーズの変化が、採用ターゲットにも変化をもたらしていることを示しています。外国人、主婦層、シニア層といった多様な働き手の採用に消極的だった店長さんやマネージャーたちも、本業の顧客が多様化することで採用の門戸を開き始めているのです。
そして、いったん迎えいれたのちの彼らの活躍を目の当たりにすることで偏見も少なくなりますし、彼らの有用性への気づきから、徐々に多様な働き手の採用の輪が広がっているように思います。2015年の「爆買いからの採用」は、まさにそういったムーブメントの象徴的な兆しといえるのではないでしょうか。2016年、また新しい雇用の兆しが生まれていくことを期待しています。
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担当 :和田
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