【店長応援企画・店長のミカタ】
求職者と企業をマッチングする採用イベントやフェアを運営
ユメックス 中田千亜紀さん、asegonia ファン・ティ・トゥアンさん
求職者と企業をマッチングする採用イベントやフェアなど、「まず対面で会ってみよう」という採用手法に注目が集まりつつある。労働市場で注目を浴びている潜在層(主婦・シニア・外国人)の採用に適しているからだ。今回は、それぞれ違う観点から「お仕事フェア」や「採用イベント」「企業説明会」などを運営している2社にご登場いただく。主婦やシニアに向けたイベントを提供するユメックスと、ベトナム人向け説明会を展開するasegonia(アセゴニア)だ。デジタル化が進む時代に、真逆なアナログリクルーティングが注目されるポイントについて、話を聞いた。
- 平賀
- ユメックスがイベントやフェアの運営サービスを始めたのは、どんなきっかけからだったんですか?
- 中田
- 2015年に最初のイベントを開催しましたが、それは医療・介護系の仕事に特化したイベントでした。介護の仕事を探している人はいても、なかなか応募まで踏み込めない、興味はあるがまずは話を聞きたいという方が多かったんです。
- 平賀
- まず話を聞くだけ聞いてみて、それから応募するかどうか決めたいという人に向けて?
- 中田
- はい。直接担当者と話す機会を持つことで、介護業界にまつわる不安やマイナスイメージを払拭することにつながって応募が増えたんです。
- 平賀
- 確かに、ある程度安心できたら応募しやすいですよね。しかも納得した上で応募していただくことによって、その後の定着にもつながりやすいですしね。
- 中田
- そうなんです。
- 平賀
- 今では介護・医療系のみにとどまらず、さまざまな職種の採用を後押ししているんですよね?
- 中田
- 医療・介護系のイベントが好評で、他の業界も採用難だったこともあり「ぜひこちらでも」という声もいただいて。その中には行政に関わるお客様もいて、女性雇用やシニア雇用の促進をしているところからのご相談もいただいたりしたんです。それで、女性やシニア向けの採用イベントもできないかということになって。
- 平賀
- そういう流れがあったんですね。
- 中田
- はい。参画される企業にも、よくよく話を聞いてみると、求人情報を見るだけでは知ることのできない待遇面でのメリットや福利厚生があったりして。そこをしっかり伝えられれば、もっと求職者の背中を押すことができるんじゃないかと思ったんです。
- 平賀
- 具体的には?
- 中田
- 例えば主婦の方などで、「私は事務職しかできない」と思っている方でも、実際に働き方の詳細や待遇について話を聞くことで、「それなら飲食や販売でもできるかもしれない」というふうに、選択の幅が広がったりするんですよね。一般的な求人媒体の利用では、なかなか新しい業種に向かう動きは起きにくいかなと思うんですが、そういうところも、リアルな場で出会えるメリットかなと思います。
- 平賀
- 主婦の方の場合、自分のブランクを気にされていたり、自分にできる仕事なのかどうかという不安もありますし、シニアの方は年齢や体力のことを気にされる方が多いんですよね。そうしたそれぞれの不安を払拭する場として、やはり対面でのコミュニケーションはとても有効なんでしょうね。
- 平賀
- アセゴニアのW.I.N.というサービスは、ベトナム人留学生向けに特化した採用イベントですよね。アセゴニアはもともとLink-Lineというベトナム人向けポータルサイトでアルバイトの求人情報を発信していたんですよね。それが、対面での採用イベントを行うようになったのは、どんなきっかけからだったんですか?
- ファン
- 今から3年ほど前、某ラーメンチェーン店を経営するクライアントにLink-Lineをご利用いただいていたんですね。その応募人数がすごく多くて、すべての人にそれぞれ対応していたら、応募をすべて受け付けられないくらいになってしまったので、なんとか効率的にできないかという相談を受けたのが最初です。
- 平賀
- なるほど。そこで応募者を集めて行う説明会のようなイベントを開いて、大量採用のサポートをするということから始まったんですね。
- ファン
- はい。でも広まったのは、企業側の懸念が払拭されることが大きかったと思います。
- 平賀
- というと?
- ファン
- 外国人の採用で企業側が一番の懸念として挙げるのが、言葉の壁ですよね。でも会ってみると、「あ、けっこう話せるんだ」とか「この笑顔ならいけるぞ」ってなるんです。
- 平賀
- なるほど。雇う側の言葉の壁に対する不安が解消されるんですね。
- ファン
- 完全に払拭されなくても感触が掴めるというか。留学生がほとんどなので、日本語の習熟度に関して言えばまだ勉強途中の場合もあります。逆に言えば言葉は学校でしっかり勉強しているので、1ヶ月とか2ヶ月でものすごく上達するんですよ。なので、最初は「どれだけ日本語が話せるか」ではなくて、「日本語はまだまだだけど、人柄がすごく良い」とか「笑顔で接客ができる」とか、そういう部分を見てもらえるといいかなと思います。
- 平賀
- 確かに。いずれにせよ実際に会ってみるというマッチングは、働くこと、雇うことの不安や懸念が解消されるというのが持ち味だということですね。でもユメックスのフェアは、応募や面接を躊躇している求職者の背中を押すことがサービスの軸で、W.I.N.は募集する企業側の外国人雇用に対する不安を払拭することが軸になってる。不安を払拭する向きが逆なんですね。
- ファン
- W.I.N.が広まったのは、もうひとつあるんです。実は、面接の約束をしようにも、求職者と連絡がつかないという声もけっこう多かったので、そうした手間をすべてアセゴニアが引き受けるということで、一度に多くのベトナム人留学生の求職者と会うことができるというのが、大きなポイントだと思います。
- 平賀
- Link-Lineで応募してきた求職者と連絡が取れなくなってしまうというのは、どういう理由ですか?
- ファン
- 彼らは知らない番号からの電話には、ほとんど折り返しの電話をかけないんですよね。日本人も同じだと思いますが、ベトナム人は特にその傾向が強いんです。
- 平賀
- それをどのように解消して、多くの人に集まってもらうようにしたんですか?
- ファン
- まず求職者に向けて事前にベトナム語で説明事項を送ることもできますし、電話やメールでの連絡にしても、アセゴニアのスタッフからの連絡だとわかっていれば、安心感もありますよね。ベトナム語での対応も可能ですし、それだけでも採用までの確率を上げることができます。あとは、実際にイベントの当日に会場までの道順がわからないという人も多いので、駅まで迎えに行くようにしたり、予定の時間に来ていない人には個別に連絡を入れたり。あと、駅からの行き方を写真に撮って社内で共有して、こういうふうに案内するとわかりやすいとか、いろいろな工夫をして「会場に来られない」という人を減らすようにしています。
- 平賀
- そこまでやってもらえるからこそ、多くの人が参加してくれるイベントになるんでしょうね。
- 平賀
- イベントの運営で大事なポイントはどういうところですか?
- 中田
- 鉄は熱いうちに打て、じゃないですけど、次のステップになるべく早くつなげるのが重要です。出展された企業はだいたい20〜30名の求職者と実際にお話しいただけます。今の時代、求人媒体を利用しても20名の応募があることなんてほとんどないですよね。で、その20名のうち何名をその日のうちに次の面接なり、採用なりにつなげられるかというのが大事で。
- 平賀
- 確かに。W.I.N.もやはりスピード感を大事にしているんですか?
- ファン
- はい。採用はその日のうちに決めてしまうことをおすすめしています。集まってくれる人たちは「働きたい」という意欲がある人ばかりなので、その日に決めると、企業の担当者が後日また連絡するという手間を省けます。なので、できるだけ当日に合否の結果を出して、最初の出勤の日時まで決めることを推奨します。
- 平賀
- 店長だったり、人事担当者の手間を省けるほど効率的ですもんね。
- ファン
- 一人ひとりに面接の時間を設定するよりも、30人一緒に集まってやるほうが、採用までの手間は圧倒的に少なくてすみますよね。
- 中田
- あと、イベントを経ての面接だと、ドタキャンが減るんです。一度お会いした上で面接日時を決めているので。最終的に採用率が何%で、っていうところまではこちらでは追えてないんですが、当日に何人の求職者がブースに着席されたかというのは、当日に聞いています。そこで平均20〜30名と話ができるとしたら、応募単価として見るとコストはなかなか良いのではないかなと思うんですよね。
- 平賀
- 採用結果までみても、効率がいいってことですね。それから、イベントを開催する時に、それぞれ何か工夫されていることはありますか?
- 中田
- リラックスして話していただきたいので、特に医療・介護系のイベントの場合は、別途円卓やカフェスペースを設けて、気軽にドリンクを飲みながら話せる場所を用意したりしています。来場者が本当に聞きたいことを臆せず聞ける雰囲気作りは常に意識していますね。
- ファン
- 弊社では、イベントを開催する企業の方には、当日なるべくネクタイとスーツではなくて、店舗の制服とか、少しラフな服装で来てもらうようにしています。固い雰囲気にならないように、最初にベトナム語で挨拶してもらうようにしたり。
- 中田
- 弊社でのイベントもそうですね。介護士さんが制服で来られたり、警備や清掃のお仕事などは、女性スタッフの方が制服を着ていると女性の求職者はイメージしやすいですし、そういうところで来場者の気持ちをほぐすというか、話しやすい雰囲気を作るように、企業サイドにはアドバイスをしています。
- ファン
- そうですよね。あとは表情とかも。今後一緒に働くことになる従業員の方たちなので、事前に従業員向けの研修をやらせていただいたりもしています。ベトナム人スタッフと働く上で気をつけるべきことや、差別的だと思えるような行動や言葉についてはきちんと説明もします。
- 平賀
- そうですよね。対面の緊張をほぐすというか、イベントの空気感を和らげるというのは、確かに大事ですね。まさに出会いの場ですからね。両社とも、応募に際しての不安払拭や、応募までの物理的困難の解消に尽力することで、今までだったら出会いにくかった求職者と企業とのマッチングを可能にしている。勉強になりました。本日はありがとうございました。
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オリンピックイヤー、働き方改革に、新型コロナウイルス問題が直撃。飲食店の職場がどうなっていくのか、現時点では、まったく見透しが立たない。
しかし日本における労働人口減少は不可避であって、女性、シニア、外国人留学生といった多様な働き手の活用は至上命題なのだ。こうした潜在層の背中を押す、また企業側の不安を払拭するには「対面イベント」は非常に有効だと、改めて感じた。もちろんウェブでのオンライン面接なども進むだろうが、潜在層の現状のネットリテラシーを鑑みると、ここしばらく間、アナログなマッチングとしての「場」を提供することは極めて有意義でもある。そういった意味でも、新型コロナウイルスの一日も早い収束を祈る。
◆プロフィール
中田千亜紀(なかた ちあき)
ユメックス株式会社
◆プロフィール
ファン・ティ・トゥアン
株式会社asegonia
◆本件に関するお問い合わせ先
担当 :和田
※お問い合わせは、お問い合わせフォームからお願いいたします。