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ツナグ働き方研究所

03 COLUMN2019.06.18

  • コラム

    【店長応援企画・店長のミカタ】BYO・中野耕治さん

    おもてなしの国ニッポン。その世界最高峰のサービス力を支えるのは、間違いなく現場を仕切る店長だ。「飲食業界」をけん引する主役たちを、どのように支援していくのか。この命題は非常に重要なイシューだ。
    今回は、本格的な和食を提供する居酒屋として「えん」を1996年にオープンさせて以来、一貫して「和」の料理やお総菜を提供してきた株式会社ビー・ワイ・オーにスポットを当てる。来年の東京五輪を待つまでもなく活況のインバウンド市場で輝く同社の戦略について、創業以来ナンバーツーとして経営をリードしてきた常務取締役の中野耕治氏にお話を聞いた。
    本格料理をリースナブルに提供する和食レストランの「価格破壊」

    平賀

    中野さんは、「えん」ブランドの立ち上げに大きく関わっていらっしゃいますよね。いろいろな業態を展開しても「和」にこだわってらっしゃいますが、やはりそこは、中野さんの「職人としての思い」が強いのですか。



    中野

    いろいろ試行錯誤を繰り返す中で、うちはやっぱり「和」しかできないということで続けてきただけなんですけどね(笑)。



    平賀

    どういうきっかけで和食の道に入ったのですか?



    中野

    もともとは、まだ海外に日本食レストランが少なかった頃に、ドイツのデュッセルドルフで当時の師匠――ヨーロッパで初めて寿司を握った人なんですけど、その人に付いて、いろんな経験をさせてもらいました。



    平賀

    そこで料理の面白さに目覚めて?



    中野

    はい。それで30歳のときに今の会社のオーナーに出会って、最初の「えん」をオープンさせるところから携わるようになりました。



    平賀

    「えん」の登場は、当時のイノベーションだったと思うんです。それまで人気を博していた、いわゆるチェーン系のリーズナブルな居酒屋と比べると客単価も少し高めで、お店の雰囲気もセンスがよく落ち着いていて、少し大人な空間の中で本格的な和食を楽しむ、というイメージで。



    中野

    そうですね。それほど高価ではなくて、少し背伸びして和食を楽しみたいという層に受けたのかなと思います。平均客単価として、いわゆる居酒屋では1人あたり2500円のところを3500〜4000円と、少し高くはなったんですけど、仕事の接待などにも使いやすいということで、大人の需要を取り込めたというのも大きかったです。



    平賀

    話題になって、すぐに繁盛店になりましたよね。



    中野

    毎月30冊くらいはテーブルに置いてあるメニューが盗まれてしまったりもして(笑)。



    平賀

    それはすごいですね(笑)。



    中野

    まあ、ある意味、価格破壊でしたからね(笑)。居酒屋層を取り込んだというのもありましたが、高級なものを庶民的な場所におろしてきたというか。だから和食然とした料理にこだわらず、洋の素材を使用したり、和の素材にオリーブオイルやニンニクをためらわずに使ったり。割烹と大衆居酒屋の中間だからこそ楽しめる、新しい料理をいろいろ開発しました。と言っても、すべての料理はちゃんと出汁をひいて、本格的な和食に引けを取らないものを目指していた。そこが支持された大きな理由だと思います。


    駅ビルの飲食フロアに出店新たな層へのアプローチ

    平賀そうした中で、「えん」は駅ビルの飲食フロアに出店したり、また新たな層に向けてアプローチもしていきましたよね。今でこそ、商業施設の飲食フロアはさまざまな業態の店が並んでいますけど、90年代後半はまだ、お酒を楽しめるお店がその一画にあるのは珍しい時代でした。



    中野

    お蕎麦屋さんやとんかつ屋さんなど、主にランチタイムの食事をメインに考えたお店が主流でしたからね。そこに「えん」が入るのはチャレンジングなことだったでしょう。でも、例えばそこに安価なチェーン居酒屋が入るのは違和感があっても、「えん」がランチにもチャレンジして、女性客に喜ばれるようなメニューをそろえていくのは面白いなと思いました。それをきっかけに、夜は居酒屋として利用してもらえるようになれば、「駅ビルの飲食フロアで飲む」というのも「アリ」という新しいマーケットを生み出すことができます。



    平賀

    なるほど。確かに商業施設の中で飲むという文化は、それまではほとんどなかったものですよね。そしてデパ地下への出店。これもエポックメイキングな業態でした。



    中野

    「だし茶漬け えん」ですね。渋谷の東急フードショーは、その頃からお総菜売り場の革命を推進していて、これまでデパ地下に進出していない企業を誘致することに積極的だったんです。で、うちの商品力に期待していただいて。イートインスペースも展開できる、そんな場所で我々に何ができるかと考えて「だし茶漬け」という新しい概念を生み出したんです。



    平賀

    これまでお酒を飲んだあとの締めとして食べるものというイメージが強かったお茶漬けを、食事として楽しむものへと、これまた価値観の変化が生まれましたよね。



    中野

    デパ地下にはこれまでになかったものって、何かあるだろうかと考えました。百貨店のお客さんと居酒屋のお客さんに接点はあまりないし、女性に喜ばれる手軽な食事って何だろうと。で、うちが自信を持って提供できる料理ということで、もともとメニューにあった「お茶漬け」を、「だし茶漬け」という名前で打ち出してみようと。


    デベロッパーからの信頼を得る外食産業としての企画力

    平賀

    それがヒットして、御社は居酒屋から、和食を総合的に扱う会社へとイメージを広げていくことに成功しましたよね。それは居酒屋で「えん」というブランドを根付かせたからこそとも思います。



    中野

    デベロッパーからの信頼というか、要望に応えられる会社だと認めてもらえているのがうれしいですね。雰囲気だけかっこいいお店を作っても、結局は中身が伴わないとお客様はすぐに離れていってしまいますし、新しさを感じさせながら提供するメニューの質にはとことんこだわる、ということは大切にしています。



    平賀

    どんな料理を提供するかということも大事ですが、そこでどんな時間を過ごすかというのも大切ですよね。だから、「だし茶漬け えん」にしても、さっと食べてお腹を満たすという場所ではあるけれど、そこで選べるメニューの種類だとか、どんな接客が心地良いと感じられるのかとか、総合的な企画力が必要になってくる。そういう意味でも「だし茶漬け」という料理は、それ自体が大きなイノベーションだったのかなと思います。



    中野

    そうですね。従来の「えん」とは真逆のコンセプトだったというのも大きかったかもしれないです。でも、居酒屋ならメインは焼きもの、揚げものですけれど、それらにしてもうちは出汁をちゃんとひいて作っているので、そこが強みだったんですよね。なので、まるで違う業態でありながら、企業としての理念やテーマはしっかり踏襲されているんです。



    平賀

    その後も「おぼんdeごはん」や「マルモキッチン」といった、新たな業態を作り出して、多くの層に受け入れられていきます。多角的に和食を展開していく中で、人材採用も戦略的にお考えなのではないかと思います。ただ、採用難の時代と言われて久しいですし、飲食店の採用は特に難しくなってきていますが。



    中野

    いやあ、本当に難しいですよね。困っています(笑)。3年ほど前から働き方改革が言われ始めて、弊社でもこの2年ほどで人事制度を見直しているところです。採用に関しては、飲食店、特に居酒屋などお酒を提供するお店で働きたいという方はどんどん減ってきていますから。


    オリンピックは世界に日本のサービスを知らしめる大きなチャンス

    平賀

    外国人のスタッフは増えていますか?



    中野

    そうですね。留学生のアルバイトさんはかなり増えました。1週間に28時間以内というルールはあるけれど、月間にすれば100時間オーバーですから、外国人でなくてもパートやアルバイトの方で月に90〜100時間勤務という方は多いですしね。なので、そのあたりは同じだと思います。フリーターが減ってきている中では、外国人のアルバイターさんも貴重な戦力です。



    平賀

    特定技能で外食産業に従事する外国人を雇用するという見通しについてはいかがですか?



    中野

    正直、オリンピックの年に間に合わせようとするなら、その改正は遅すぎましたよね。これは外食だけに限らず、ホテルなどのサービス業全般に言えることですけれど。



    平賀

    海外の方たちが日本でアルバイターとしてではなく、コアな人材として働く場合に、外食産業や飲食業を選択するかどうかという問題もありますよね。



    中野

    どんな仕事に就こうかと考える前に、まず仕事そのものが楽しくないと続けないですよね。たまたま最初にアルバイトをしたのがレストランで、そこが面白いと思ったとしても、その後に例えば介護職へと転職する人もいるわけですし。もちろんその逆もあるけれど。だから今回の法改正が及ぼす影響として一番問われるのは、企業それぞれの姿勢だと思ってます。



    平賀

    少し前までは、飲食店などでの接客は人間でないとできないと言われていましたが、AIの進歩やテクノロジーの進化で、多くの飲食店が機械化を取り入れ始めていますよね。タッチパネルでのオーダーもそうだし、食材の発注や管理などもコンピュータでできる範囲がどんどん広がっています。それがグローバルな流れでもあるけれど、日本流の細やかな「おもてなし」と機械化が両立するには、まだまだ時間が必要だろうと思うんですよね。



    中野

    そうですよね。すぐ間近に控えたオリンピックで多くの海外のお客様をお招きするとして、そこは日本らしいサービスをもっともっと経験していただくチャンスだと思うんです。料理ひとつひとつにしても職人のこだわりとか思いがあって、それを世界に知らしめることができれば、おのずとその企業は、働く先としても「選ばれる」魅力的な会社になるんじゃないかと思いますね。



    平賀

    昔は企業が採用する人を選ぶ時代でしたが、もはやお店も人も、応募する若者が比較して取捨選択する時代ですもんね。



    中野

    評価されていく中で会社のあり方を整えていくというのも重要なんですが、歴史ある会社ほど、これまでの慣習を変えるのは難しいでしょうね。でも、店長が忙しすぎて本部とコミュニケーションがうまく取れてないとか、会議に出る時間もないというのはやはり問題で、そもそも店長の仕事ぶりを見て、アルバイターなどのスタッフは「自分もそうなりたい」と、目標ややりがいを見つけていくべきなんですけど、その時間さえもないとなると、やはりそこは問題なのかなと思います。



    平賀

    仕事にモチベーションを持てるかどうかも、やはり「人」ありきなんですよね。



    中野

    スタッフが自分の時間や情熱を傾けられる仕事かどうか、そこは企業がしっかり考えていくべきだと思っています。だから店舗運営が社員やスタッフの犠牲の上にあるのは間違いで、誰もが共に成長していける土壌を作ることこそが、「働き方改革」の意味なんだと思いますね。



    平賀

    今はまさにそこに意識的になれるかどうか、その転換期にあるのだと思います。和食の魅力を多くの人に発信していく企業として、御社の今後の展開にも期待しています。今日はお忙しい中ありがとうございました。



    中野

    こちらこそ、ありがとうございました。


    * * *



    中野さんは、インタビュー中に何回も、「ちゃんと出汁を引いてつくる」という言葉を口にした。「和」の料理人らしいといえば、そうだが、ご本人自身も、そういう凛とした佇まいのある方だった。

    「うちの雰囲気をまねて、うちより安くして、というお店も出てきましたけど、うちはやはり料理の質にはこだわっていましたから。他社さんに追われるのなら、うちはもっと先へと、いつもそう思っていますね」。

    そう語る中野さんからは、職人として、経営者として「和」を貫こうという静かな覚悟が感じられた。

    「えん」というブランドが誕生して20年以上の月日が流れる中、「和」のトップランナーとして存在感を示し続け、インバウンドブームの主役でいられるのは、そういったブレのない姿勢があるからだろう。


    ◆本件に関するお問い合わせ先

    ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)
    担当 :和田
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