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ツナグ働き方研究所

【多様な働き方を研究するコラム】トップガン マーヴェリック教える「現役」の意味

還暦トム・クルーズが還ってきた

みなさんは『トップガン マーヴェリック』を観ましたか――。


今年還暦を迎えたトム・クルーズの一個下である自分は3回観ました。自分だけでなく「追いトップガン」という言葉が登場するくらい、何回も劇場に足を運ぶオジサンやオバサンがものすごく多いようです。なぜ、『トップガン マーヴェリック』はこんなにも我々世代を熱狂させるのでしょうか。


まず冒頭5分で、1986年に熱狂した者たちの心を鷲掴みにします。前作とほぼ同じオープニングシーン。もちろんBGMはケニー・ロギンスの「Danger Zone」。一気に当時にタイムスリップする演出が心憎すぎます。


続いてトム・クルーズの登場。およそ60歳には見えないものの、それでも36年を経た顔のしわ、たるみがスクリーンに刻印されます。しかし、一方で今もなお、レイバンをかけ、往年のレザージャケットG1に袖を通し、KAWASAKIのバイクで疾走します。いまだ現役感バリバリ。昭和世代はグッときます。


時代遅れの遺物

マーヴェリック=トム・クルーズは現役感満載でなにも変わらないけど、トム以外はすべて変わっていました。上司もみんな年下。ライバルだったアイスマンは司令官に出世。いつまでも若い(つもりの)トムに突きつけられる「時代遅れの遺物」としての現実。


「きみたちパイロットの居場所は海軍にはない」と上官に突き放されるシーンがあります。年下上司に煙たがられたり、働かないおじさんと揶揄されたり、職場で「時代遅れの遺物」と扱われがちな我々世代と、トムも同じ環境に置かれているのです。しかしトムは穏やかな表情で、そして強い意志を宿らせた瞳で、たった一言、「Not Today」という言葉を返します。


そうだ!俺はまだやれる! 我々の鬱憤(うっぷん)を、吹き飛ばしてくれるトム。


そうなんです。トップガン マーヴェリックは、単にノスタルジーを刺激する映画でなく、昭和世代の生き様や働き方を正当化してくれるのです。


マネジメントが下手すぎる

そして教官という立場でトップガンに戻ったトム。


年の離れた今どきの若手訓練生との世代間ギャップに立ち向かいます。最初は馬鹿にされますが、飛行訓練では筋金入りのテクニックを見せつけて訓練生たちに圧勝。ここは痛快シーンのひとつですが、その後の訓練では苦心します。指導ではなく率先垂範といった昭和型マネジメントだけでは、若者の成長を促すことがなかなか難しい時代です。ここには、多くの昭和型管理職が経験したマネジメントの葛藤が投影されていきます。


極めつけは、ミッションリーダーとしてトム自身が飛ぶというまさかのストーリー展開(ネタバレですいません)。現場の仕事から離れ、デスクワークに辟易とするミドルマネジメントが現場のサポートに入った時に感じる「やっぱオレがいなきゃダメなんだよなぁ」というカタルシスの瞬間です。


しかし、これ、マネジメントのセオリーではダメダメです。メンバーの成長を支援し、本人に成果を発揮させるのがスジ。実際の職場で同じようなことが起こったら、ミッションから外されたメンバーの不満は尋常じゃないはず。現役一匹狼のトム、マネジメントが下手すぎます。


圧巻のスカイアクションのために

しかし、スクリーンの中のトムと違って、この映画にプロデューサーとしても名を連ねるトムの実像はまったく違います。トムは優れたマネジメント力を発揮しているのです。


彼が本作でもっともこだわったのは、CGを使わずにすべてをリアルに撮影することでした。圧巻のスカイアクションを生み出すには、出演俳優全員が本物の飛行に耐えうるようになることが不可欠です。


そこでトムは、役者向けの3ヶ月にわたるF-18戦闘機訓練プログラムを自身で考案しました。劇中のマーヴェリック以上の本物教官として、若きパイロットの育成に全力を注ぎ込んでいったのです。


教え子たちは、その訓練を “ミニ・トム・ブートキャンプ”と形容しました。「どの飛行機から始め、どの飛行機へとレベルを上げていくのか。すべてトムが計画してくれました」と、ある出演者は語っています。


それだけではありません。毎日トレーニングを終えると若手俳優たちは自己評価を行ない、感じたことや経験したこと、その日の挑戦や失敗などを書いて提出します。それをくまなく読んだうえで、トムは時に彼らと議論を重ね、時に相談に乗りアドバイスを送ったといいます。これ、理想的なマネジメントを体現しています。


「Not Today」の本当の意味

スクリーンのトムは、我々世代をノスタルジーの世界に連れて行ってくれます。懐古主義に浸り肯定することを許容してくれます。最新のテクノロジーではなく、アナログながらリアルな迫力にこだわる演出も、どことなくテレワークではなく出社を好む我々世代の姿と重なります。老いに抗い現役にこだわる。昔風マネジメントが通用しない。そんな不器用な生き様にも、自己投影し共感せずにはいられません。


しかし、カメラの回っていないところでのトムは、不器用どころか「卓越したマネジメント」で若者をうまくリードしています。用意周到なプログラムを準備し、自身の経験を教え伝え「教官」でありつづけたわけです。そのために日々努力し、自身をアップデートしています。


「現役」でいるには、いくつになっても頑張るしかないーー。「Not Today」という言葉には、こうした強い気持ちが込められているのかもしれません。結局のところ、オジサンもオバサンも懐古主義にどっぷり浸ってる場合ではないってことか……。トップガン、深いなぁ。


◆本件に関するお問い合わせ先

ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)
担当 :和田
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