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ツナグ働き方研究所

03 COLUMN2018.08.02

  • コラム

    【短期集中連載】外国人技能実習生現場レポート Vol.1

    深刻な人手不足を受け、外国人労働力をめぐる議論が活発化している。いうまでもないが、外国人就労政策は移民政策と対をなす非常にナーバスなテーマだ。だからこそ歴代の日本政府はここまで慎重に慎重を期した対応をしてきた。そうした葛藤の中で、妥協の産物として事実上の外国人就労を担ってきたのが「外国人技能実習制度」なのだろう。
    政府が外国人受け入れ政策を大転換するのは、この技能実習という建前と本音の軋みに、限界を感じたからなのかもしれない。ツナグ働き方研究所は、少しでも外国人就労の実態に迫りたいと考え、外国人技能実習生についてその現場を緊急取材。
    第1回目は、「外国人技能実習制度の矛盾」をおさらいすることで、本連載の問題提起としたい。
    ■外国人受け入れ大転換

    政府が、とうとう外国人受け入れ政策を「大転換」する。

    これまで「単純労働」とされる分野での外国人就労は原則禁止されてきたが、新たな在留資格を創設して、そうした分野でも「労働者」として正式に受け入れる。

    新制度は、日本人の就労希望者が少なく、慢性的な人手不足に陥っている「建設」「農業」「宿泊」「介護」「造船」の5分野を対象に、新設する「特定技能評価試験」(仮称)に合格すれば最長5年就労資格を得られるようにする。技能実習生として最長5年滞在できる現行ルールに加えて、新たな就労資格を得れば、合計10年にわたって滞在できるようになるのだ。企業としては実質的な長期雇用が可能になる。


    ■どこまでも深刻な建設現場の人手不足

    法務省がまとめた2017年末の在留外国人数は256万1848人。1年前に比べ7.5%、約18万人も増加した。5年連続で増え続けており、256万人は過去最多だ。厚生労働省に事業所が届け出た外国人労働者は約128万人で、これも過去最多を更新している。

    中でも建設業に従事する外国人労働者が急増している。2016年4万人強だったのが2017年は5.5万人と34%も増加。外国人労働者の前年伸び率では全産業でトップ。産業としての構造的な人手不足が最も深刻な業界だ。

    そもそも3K(きつい、汚い、危険)職場と指摘されることの多い建設現場の人材ニーズを満たすことは容易ではない。働きたい人1人当たりにいくつ仕事があるかを示す有効求人倍率は、建設業では4?5倍という高い水準で推移しており、慢性的な人材不足を物語っている。新制度によって政府は、2025年までに5分野で「50万人超」の受け入れを目指すとしているが、その半数以上にあたる30万人は建設業の労働者を想定しているのだ。


    ■2020年の東京五輪に向けた建設ラッシュ

    足元では東京五輪に向けた建設需要も高まっている。リクルートワークス研究所が推計したデータによると、2020年の東京五輪が生み出す労働力は81.5万人。うち、建設業における人材ニーズが最も大きく33.5万人となっている。これは日本における建設業就業者(約500万人)の約7%にあたるインパクトに相当する。

    メインスタジアムとなる新国立競技場の建設も急ピッチで進んでいる。現在、最難関とされる屋根工事の根幹部分を建設中で、神宮外苑の緑と調和する「杜(もり)のスタジアム」が、いよいよその雄姿を現しつつある。しかし昨年10月、新国立競技場の建設工事に従事していた現場監督の男性が193時間にもおよぶ残業の末、過労自殺したという不幸な報道もあったように、現場は明らかに外国人頼みなのだ。とある建設現場においては、どう見ても東南アジアから来たと思われる外国人が、「鈴木」という名札をつけて働いているという都市伝説もあるくらいだ。


    技能実習生は急増している。ここ数年で毎年およそ2.5万人から3.5万人ずつ増え、2017年10月時点では25.8万人にまで至っている。国別で一番多いのは10.5万人のベトナム人。勤勉な国民性が企業に広く受け入れられる最大の理由とされているが、もともと一番多かった中国人実習生の賃金が高騰し続けたために需要と供給がマッチしなくなり、代わりに親日色が強く勤勉なベトナム人に注目が集まった、という経緯もあるようだ。


    ■「外国人技能実習制度」のホンネと建前

    「外国人技能実習制度」を使った事実上の就労―――。

    改めてその制度の概要を整理しておこう。外国人技能実習制度とは、途上国から希望者を招き、日本で一定期間就労しながら技術や知識を学んで自国の発展に役立ててもらう、という制度だ。受け入れができる職種・業種は、建設業や食品加工業などの77職種・139作業(平成29年12月6日時点)。外国人実習生は、3年間(延長含め最長5年間)日本企業の雇用のもと、さまざまな職業上の技能を習得・習熟して帰国する。

    少なくとも名目上は、日本側の経済政策というより国際協力の一環として定められた制度である。外国人技能実習生の受け入れとは、あくまで「技能の移転」が目的であり、また、外国からやってくる実習生にとっても、就労の目的は「技能の習得」であるはずだ。つまり日本の人手不足を補う「労働力確保」が目的ではないとされているのだ。


    しかし実態は違う。受け入れは紛れもなく「人材確保」のためである、というのが業界のホンネであり、また、実習生達自身も明らかに「出稼ぎ」のつもりで来日しているのだ。

    ある関係者によれば、日本で習得した技能を帰国後に活かして働いている実習生はほとんどいないとか。また建設関連企業が面接した実習生希望者に、帰国後にやりたいことを尋ねた際「飲食店を開きたい」という能天気な回答が返ってきた、というようなエピソードがいくらでもあるのだ。


    ■制度の矛盾が問題を助長?

    あくまでも「出稼ぎ」として日本にやってくる実習生は、お金を稼ぎたいあまりに不法残留や失踪が後をたたない。一方で彼らを「労働力」として捉えている受け入れ企業は、とにかくたくさん働かせたい。結果として過重労働問題が発生する。双方のホンネの思いが強ければ強いほど、違法性が高まる構造といえよう。


    しかし問題はそれだけではない。ネット上には「外国人を低賃金でこき使う現代の奴隷制度」と揶揄する書き込みも多々ある。受け入れ企業の違法な「ブラック実習」を糾弾する声も後を絶たない。

    実習生は特段の事情がないかぎり、自己都合で他の受け入れ企業に移ることができない。離職率の高い業界において、長く働いてもらえることは大きなメリットといえる。しかもそれだけではない。というかここが最大のポイントなのだが、実習生に「転職の自由」がないということは、受け入れ企業が制度を正しく利用しなくても労働市場から淘汰されることがないということと、ほぼ同義なのだ。賃金不払いや不当な経費天引きといった違法行為が横行するのは、受け入れ企業を移ることができないことで「労使」の不平等感が拡大してしまうからに他ならない。


    ■実習生のリアルが知りたい

    このように国際貢献という制度目的と実態の乖離、労働関係法令違反、人権侵害、中間搾取といったさまざまな問題が指摘される中、それでも実習生は年々増加している。ここ数年で毎年およそ2.5万人から3.5万人ずつ増え、2017年10月時点では25.8万人にまで至っている。国別で一番多いのは10.5万人のベトナム人。上記のようなさまざまなリスクがあったとしても、彼らは日本に来たいのだろう。

    世の中的に語られる実習生制度の闇、とはいえ人手不足に喘ぐ業界、日本を目指す外国人の本心。実際のところ、外国人技能実習がどのように運用されているのか、この目で確認してみるしかない。我々は、ベトナム人実習生の受け入れを行っている監理団体へコンタクトをとることができた。次回は、その監理団体へのインタビューをお届けする。一言でいうとすごく「ホワイト実習」が実践されていた。取材できたベトナム人実習生も、もちろんお金を稼ぐというピュアな動機から日本を志したのだが、クリーンな先進国として日本をリスペクトしていた。ほんの断片かもしれないが、こういうリアルもあるのだ。


    ◆本編資料(PDF)もしくは参考サイト(URL)はこちらから

    【2017年度】労働市場データ特別編(外国人雇用)

    ◆本件に関するお問い合わせ先

    ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)
    担当 :和田
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