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ツナグ働き方研究所

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【障害者雇用促進法】「障害者雇用ビジネス」に対する制度的対応案を集中審議、厚労省の有識者研究会 ガイドライン設定などに「賛成・支持」と「慎重・時期尚早」が拮抗

ツナグ働き方研究所は、労働法制の最新動向をウオッチしています。今回は、 「障害者雇用ビジネス」に対する制度的対応案の動きについてお伝えします。

公労使と障害者団体の代表らで構成する厚生労働省の「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」(山川隆一座長)は12月1日、法定雇用率の達成だけを目的とした利用が指摘されている「障害者雇用ビジネス」(代行ビジネス)について集中的に議論を深めました。事業者団体の日本障害者雇用促進事業者協会(JEAP)を招いて現場の取り組み事例や成果などを確認したのに続いて、事務局の厚労省が制度的対応案を提示。障害者雇用状況報告(毎年6月1日時点)の際に利用状況などを記載させる案や、事業者向けにガイドラインを設定する考えを示したのに対し、研究会委員からは「賛成・支持」と「慎重・時期尚早」の意見が拮抗しました。また、利用企業が拡大する背景と根本に、短期間で上昇を続けている法定雇用率のあり方があらためてクローズアップされました。


昨年12月に始動した同研究会は、障害者の雇用者数は堅調に増加している一方で「雇用の質」の向上に向けてどのような対応が求められるか。加えて、雇用率制度(法定雇用率)については(1)手帳を所持していない難病患者や、精神・発達障害者の位置づけ(2)就労継続支援A型事業所やその利用者の位置づけ(3)精神障害者において雇用率制度における「重度」区分を設けることについて(4)障害者雇用納付金の納付義務の適用範囲を常用労働者数が100人以下の事業主へ拡大することについて――をテーマにヒアリングを交えて丁寧に議論を重ねています。


同研究会発足時には、「障害者雇用ビジネス」を単体のテーマとして扱う予定はありませんでしたが、この1年の間に多面的に議論を展開するなかで事業者と利用企業の課題と対応を検討する必要性が高まり、今回、集中審議という形で実現しました。


この日、事業者団体であるJEAPの西村賢治理事長は同協会の「現在地と業界の目指す姿」と題して、(1)障害者雇用の取り組み(2)事業者の役割(3)雇用機会拡大と質的向上(4)事業の拡がりと多様化(5)報道と実態のギャップ――の5点に整理して説明。そのうえで、「伴走型」の実例として、事業者の知見を活用したサテライト型雇用の取り組みや、サテライト型雇用から管理部門や事業部へ多様なキャリアパスを実現するスキームを紹介しました。「雇用の質」の観点からは、「障害者雇用支援サービス適格事業者認定制度」と、JEAP認定の「障害者雇用支援アドバイザー」研修制度に触れました。


事務局の厚労省は、これまでの議論で挙がった委員の意見や関係団体のヒアリングの声などを踏まえて、「障害者雇用ビジネス」に対してどう向き合うかの論点を提示。課題に対する制度的対応として、「利用企業による報告」と「事業者向けガイドライン設定」を挙げました。前者は、企業に義務付けている障害者雇用状況報告(いわゆる6.1報告)時に「障害者雇用ビジネス」の利用実態を記載させる案で、就業場所や事業者の情報、障害者が従事する業務内容、利用予定期間などの適正な雇用管理に係る情報などの項目を想定。


後者は、障害者雇用に精通した一定の資格者の配置や、利用企業に対する支援メニューとして、(1)障害者の就業を通じた成果物が、利用企業自身の事業活動において有為に活用されるための提案・支援(2)利用企業自身の事業活動の中での障害者雇用のための業務切り出しや業務設計・再構成、雇用される障害者の希望を踏まえた複数の就業場所・業務内容の提案・支援(3)最終的に、利用企業が自社の就業場所での障害者雇用に移行させていくための提案・支援――などを提示。利用企業に対しては「ガイドラインに沿っていない運営を行う事業者の利用は望ましくない」と示す方策を挙げました。


支援サービスの内容が多様化しているなかで、事業者の定義は明確ではありませんが、厚労省が今年10月末時点でまとめた把握状況によると、事業者数は46で就業場所数が221カ所。うち、農園153カ所、サテライトオフィス56カ所。利用企業は1802社以上で、社名を把握した企業数は363社、就業障害者数は1万1141人以上となっています。


事業者団体の取り組みと厚労省の制度的対応案について、委員がそれぞれの専門的知見や現場感覚などを踏まえて、障害者福祉団体と有識者の一部委員は「業務内容や就業場所の分離によるインクルージョンの観点からの課題と雇用責任の希薄化などが加速するのに歯止めが必要」として、ガイドラインの設定や障害者雇用状況報告での利用状況記載に賛意を示しました。一方、経団連や中小企業連合会、商工会議所の使用者側委員は「事業者の定義も明確でないなかで、利用企業が記載を義務付けられるのは時期尚早」「事業者が自主的に健全運営の取り組みに注力しており、推移を見守る必要もあるのでガイドライン設定は慎重に判断すべき」と指摘しました。


また、賛成と慎重の双方の立場から共通して挙がったのは、利用企業拡大の背景に上がり続ける法定雇用率の問題があるとして、この方式のあり方について総合的に検討することを確認しました。


◆本件に関するお問い合わせ先

ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)
担当 :和田
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