
【多様な働き方を研究するコラム】
「ポイントカードはお持ちですか?」をめぐる論争
いつから会計時にこのセリフが聞かれるようになったのでしょうか。
確かに主要共通ポイントカードをはじめ、家電量販店やドラッグストア、スーパーが独自に発行するものまで、今や「ポイントカード戦国時代」といっても過言ではない状況。
会計時にポイントカード保有の有無を尋ねられるのは必然の流れなのかもしれません。問題は、この問いにどう答えるべきか。もともとポイントカードが苦手な自分は、そういった類のものを持ち歩いていないのですが、「ない」という返答のニュアンスづくりが意外と難しいのです。
店員さん「ポイントカードはお持ちですか?」
自分「ないです」
これだと文法的にはあっているが、なんか角が立つ感じ。
しかも、「ではお作りしますか?」という勧誘へのトスを上げてるような気もする。
自分「けっこうです」
これだと聞かれてもないのに「お作りしますか勧誘」を先回りして封じ込めているようで感じが悪い。
自分「大丈夫です」
カードないけど、ポイント集めていないから大丈夫を省略した形。言い方も柔らかい。こんな経緯で、しっくりこないものの「大丈夫です」という返答に至りました。
さらにその先があります。
最近、持っていなかった場合の対応として店員さんから「失礼いたしました」と謝られてしまうケースも増えています。これはこれで、言われるたびに違和感を感じます。謝ってもらうほどのことでもないのに、「持ってない!いちいち聞くな!」というオーラが出てしまっているのでしょうか。こっちが申し訳ない気持ちになります。
いずれにせよ
「ポイントカードお持ちですか?」
「大丈夫です」
「失礼しました」
って、完全に日本語として破綻していますよね。
このような日本人特有の忖度的コミュニケーションに小さい疑問を感じるのは自分くらいかと思いきや実は、この「ポイントカードお持ちですか?」確認問題は、ネット上でもかなり物議を醸しだしているテーマでした。
昨年の秋には、「客(ポイントカード持ってるかきかれるのうぜえ)店員(きくのうぜえ)」というスレッドまで立ち、すでに多数の苛立ちが表明されていました。
確認自体の面倒臭さへの指摘もあるのですが、多くの声からは、双方の言葉遣いへの違和感がやはりストレスの大きな理由であると伝わってきます。「お持ちですか?」→「大丈夫です」という返答に、「『いらないです』と笑顔で言えばいいように思います。
『大丈夫です』はかなり意味不明です。イラッとするのは私だけでしょうか?」というレジスタッフの声が上がっていますし、一方で、「大丈夫です」→「失礼いたしました」と謝られてしまうことに対し、「言われるたび、私は『店員を謝らせて平然と店を出る客』になってしまい、すっきりしません」というお客さんサイドの声もあります。
忖度しあうことでおかしなコミュニケーションになってしまい、それがお客さんと店員さん双方のストレスになってしまう。笑えないジョークのような話ですが、おもてなしの国であるがゆえのジレンマともいえるのでしょうか。
しかも、これから外国人労働者が店頭に立つことも増えてくる中、こういった日本独特の忖度コミュニケーションの成立は至難の技です。
先般取材の機会がありお会いしたベトナム人留学生は、「全然オッケー!」という語法にすごく混乱していまいた。本国で勉強してきた日本語と用法が逆だからです。
でいくと
「Do you have a POINTCARD?」
「No problem」
「Sorry about that」
英語にしてみると余計違和感がありますし、このやりとりは外国から来た労働者には、もはや意味不明でしょう。そういった意味では、来るべきグローバルコミュニケーションを前提にして、職場の言葉遣いを考えていくことも重要になってきます。逆に、過剰な忖度言葉の乱用が落ち着くかもしれません。
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