【多様な働き方を研究するコラム】テレワーク・ハラスメント誕生
緊急事態宣言後、正社員のテレワーク実施率は全国平均で27.9%—- 。
パーソル総合研究所が、2020年4月10~12日に全国2.5万人規模の調査を実施した「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によると、労働者の約3割がテレワークで働いています。
国勢調査に基づいて簡易的に推計すると、約760万人がテレワークを実施していることになります。この1か月間でもテレワークを行っている人が約400万人増えている、そんな「にわかテレワーカー」が急増する中、オンラインコミュニケーション上でハラスメントが横行しはじめているようなのです。
ある調査によると、テレワークで上司とのコミュニケーションに不快感を覚える部下は8割に上ることが分かりました。しかも職場への出社時と比較してストレス等が増えたと感じる会社員が66.4%。
最もベーシックなものとしてあげられるのは、上司が電波環境の悪さに苛立ちをみせることのようです。「自宅の接続環境、回線速度が悪いことで、嫌みを言われた」「回線が途切れて聞き取れなかったので聞き返したら、すごくイライラされた。その経験から聞き返せなくなった」などなど、部下からすると、どうにもできないことに苛立つケースが多く聞こえてきます。 起こっている事象は電波環境起因ですが、その根底にあるのは上司の理不尽さ。リアルな職場でよくみられるハラスメントとなんら変わりません。
一方、リモート環境だからこそ発生しがちなハラスメントもあります。先述のパーソル総研の調査でも、テレワークを行っている人の不安は、「相手の気持ちが分かりにくい」37.4%、「仕事をさぼっていると思われないか」28.4%、「上司から公平・公正に評価してもらえるのか」22.6%と、上司の目を気にする部下の姿が浮き彫りになりました。
仕事ぶりが見えづらくなることで、任せている仕事は期日を守って納品できるのか?とチェックすること自体は上司の役目です。しかし、そこに少なからず性悪説的な視点が入ると、部下への疑心悪鬼の念が生まれてしまいがちです。これが過剰な管理とも思われるオンライン上の「3密」状態を発生させ、テレワーク・ハラスメントにつながるのです。
オンライン上の「3密」とは、
・上司が仕事について密に説明を求める「密説」
・上司がリモート上でも密に監視する「密視」
・上司が密にテレビ会議招集する「密会」
というオンラインマネジメントにおける3つの密を指します。
「常にパソコンの前にいるかチェックされていている」「チャット等で定期的に話しかけられる」といった「密視」は、オンライン3密でもっとも数多く聞かれる事例かもしれません。中には「ずっとテレビ会議を繋ぎっぱなしにさせられて、1秒の隙もなくひたすら監視されています」「2分に一回、上司にZOOMで撮影されます」といったかなり極端な「密視」の例もあります。
マネジメントにおいて“部下の仕事ぶりを管理すること”が重要な任務であることは、先述のとおり。しかし、そもそもリモート環境において、そもそも業務の進捗をこと細かく管理するには限界があります。どう折り合いをつけるのか。
そのカギは性善説。テレワークをうまくいかせるコツは、性悪説ではなく性善説に立脚し、業務プロセスより成果を重視するとされています。かのグーグルの人事ポリシーはまさに性善説をベースにした個人能力の最大出力です。
奇しくも2020年の6月からパワハラ防止法が施行され、より一層力を入れたハラスメント対策が必要になります。この新種のハラスメントにも対応していかねばなりません。
管理職のみなさん、あなたは部下を信じきれますか。
とはいえ、言うは易く行うは難し。
自分にも問い続けるテレワークの日々です。
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担当 :和田
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