
【多様な働き方を研究するコラム】リモートワークに雑談を
週2.5日以上在宅勤務になると同僚との関係性が悪化するーー。
テレワークの長期継続は、チームワークや組織への共感度合いを悪化させる場合があることが、研究から明らかになってきました。
「挨拶」「雑談」「周りから入ってくる会話」といった職場で自然発生していたコミュニケーションが、リモートでは断然減ります。もともと組織内での関係性が濃ゆいメンバーシップ型の働き方をしている日本では、職場の人間関係が希薄になることで、孤独感を感じやすい傾向が強いといわれます。これまで対面で会話し、会議室で議論を戦わせるという習慣が身に沁みついていた人ほど、テレワークではなくソロワークだという感覚になるようです。こうした孤独や不安が、組織エンゲージメントの低下を招いていくのです。
リモートならではの孤独や不安を払拭できるか。エンゲージメントクライシスを乗り越えてオンラインコミュニケーションを活性化できるか。こうしたなかで見直されているのが、「雑談」です。
リアルな職場では、ムダに思えるようなたわいもない会話が、リモートでの組織運営に効果的であることが分かってきました。雑談→相手を知り、自分を理解してもらいやすくなる→相談しやすくなる→メンバーのモチベーションが高まり、チームの結束力につながる。リアルな職場では、こうした目的なきコミュニケーションが「心理的安全性」を担保しエンゲージメントを高めていたわけです。
また、雑談から派生する“ちょっとした相談”によって、業務が捗ることは往々にしてあります。一見、生産性を下げそうな会話が、実はメンバーの業務遂行にも好影響を与えるのです。
しかし、そもそも自然発生的な対面コミュニケーションをオンライン上で意識的に再現するのは、なかなか難しくもあります。だからこそ、実践している職場では自然な雑談環境を演出すべく、さまざまな工夫を凝らしています。
ある企業では、オンラインランチを開催しています。
小さな悩みや今日の出来事、ニュースの話などあえて雑談するために、一緒にランチをとるようにしているのです。仕事をしている時だと話しにくいことでも、リラックスした食事時なら話しやすくなるのは、確かに分かるような気がします。職場のオンライン飲み会だと、もっと砕けた環境にはなるでしょうが、そもそも飲み会にアレルギーを示すメンバーも少なくないことを考えると、ランチくらいがちょうどいいのかもしれません。
またWEB会議が終了した時、すぐに退出せずに雑談を促すのも有効なようです。
わざわざ雑談のためにテレビ会議を招集するのではカジュアルな感じが薄れます。あとの時間に余裕さえあれば、気軽なコミュニケーションが取れる空気感を演出できます。また会議の延長戦的に、 ちょっとした業務の相談がしやすくなります。
そして意外と多いのが、オンラインで繋ぎっぱなしというケースです。
「繋ぎっぱなしにしておくとオフィスにいる感覚とかなり近いので、ちょっとした相談もすぐしてくれます。特に若手は遠慮してしまうので、この方法で少しでも話しかけやすくしています」と、この取り組みを実施している企業の方が話してくれました。
それにしても、「雑談」という(リアルな職場ではムダとさえ感じる)非生産的コミュニケーションが、リモートの課題に対する打開策のひとつであるとは。そして“職場の雑談をいかに活性化させるか”について真剣に議論する日が来るとは…。コロナの前は思いもよりませんでした。
とはいえ、この働き方がポストコロナおけるニューノーマル(新常態)となっていくのは間違いないとすれば、雑談だろうが何だろうが大真面目に試行錯誤しながら、この働き方を制していかねばなりません。
満員電車に乗らなくてすむ。最初は、そのくらいの軽い気持ちでウエルカムだったテレワークという働き方も、日常となっていくのであれば、そろそろ真剣に向き合う必要がでてきます。
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担当 :和田
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