【多様な働き方を研究するコラム】
昭和の働き方がトンデモに思えてきた今日この頃
4月の法改正もあり働き方改革が急ピッチで進む令和元年。
その30年前の平成元年、流行語大賞に選ばれたのが「24時間戦えますか?」でした。
今となっては、耳を疑うくらいの強烈なフレーズですが、当時は、まるで違和感なく受け入れられていたように思います。とにかく長時間働くことが美徳であり正義である時代でした。
それにしても(自分も含めてですが)、24時間、ナニと戦っていたんでしょうか(苦笑)。
その背景には終身雇用、年功序列という雇用システムがありました。
就職したら一生その会社で働くのが前提。「忖度」はすべて上司に向いていて、ライバルは社内、家より会社に帰属意識を持つ。強固な「会社内タテ社会」を生き抜く必要があったのです。そんな中で派閥争い、権力闘争、出世レース…。確かに社内で戦いに明け暮れていたのです。「白い巨塔」「集団左遷」「半沢直樹」。こうした社会派テレビドラマに描かれる物語は、大げさでなく、リアルな会社の中でもそこらじゅうで起きていました。
そして、社内で出世レ?スを勝ち抜くためには必須だったのが「仕事量」でした。上長からの評価は、会社のために(=自分のために)どれだけたくさん汗を流せるか。そういう馬力比べ時代の象徴が、「24時間戦えますか?」だったのです。
こうして改めて、そのモーレツな働き方を客観視してみたらなかなかシュールな世界だと思いませんか(苦笑)。このように違和感を覚えるようなトンデモな働き方は、今から思うといっぱいあります。
例えば、仕事は教えてももらえませんでした問題。
「いちいち聞くなよ、とにかくやってみろ。シゴトってのは見て盗むもんだ」。
しかし、とりあえず自分でやったらやったで、ちゃんとできてないと怒られる。また、ありがちなのが「言われたことしかやらない」という文句。
当時は、言われたことをやっても怒られていたのです。「なんでそんなことも気づかないの?なんでそこに気が回らないの?」という主旨だったのでしょうが…。今風のデジタルリテラシーは必要なかったけどある意味でテレパシー的なものを要求されていた時代でした。
いま、カフェはノマドワーカーの巣窟となりシゴトをする場所です。
しかし、その昔、喫茶店と呼ばれた時代には、サラリーマンの昼寝場所でした。スマホなんかないから、一回会社を出れば捕まらないわけです。なので夕方までうまくサボりつつ、夕方から会社で残業して頑張ってるアピール。24時間ずっとは戦えないから、うまく手を抜かないとやってられないのです。でも夕方5時から頑張れば、上司に気にいられるし、残業代も増える。
喫茶店での昼寝は、長時間労働時代の必然的ワークスタイルだったのしょう。
拙著「なぜ最近の若者は突然辞めるのか」で、いまの若者は、オープンに誰とでもつながる「SNSムラ社会」の住人であると指摘しました。会社がすべてだった時代に、クローズドな「会社内タテ社会」を生きてきた我々オトナ世代とは、大きく価値観や行動原理が違います。
いまの若者と向き合う時って、いかにも昭和的な働き方にノスタルジーを感じつつ、つい「オレたちの若かった頃は…」と、なりがちじゃないですか。
しかし、冷静に振り返ってみたら、「オレたちの若かった頃」も相当にヤバいわけです。自分たちが当たり前だと思っていた働き方って、実は異常だったと認めましょう。
過去に向き合うことが、今どきの若者と近づけるヒントになるかもしれませんよ。
関連書籍
『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)
<若者の「心の中」 例>
・ バリバリ働いて40万円稼ぐより、そこそこ働いて20万円でいい
・ 「コスパ」の悪い飲み会、残業はNO!
・ 大きな売上をゲットするより、「お客さんが喜ぶ」ことが大事!
・ 出世してプレッシャーを背負うよりも身の丈にあったポジションで自分らしく働きたい
・ 目立つエースにはなりたくないけどベンチ要員も嫌
・ どんな暴言よりも「時間を奪われる」ことが最悪のパワハラ!
・ 石の上に三年なんていられない! 修行するより仲間とコラボして結果を出したい
・ 「自分的には普通にアリ」…はっきり白黒つけたくない
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