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ツナグ働き方研究所

03 COLUMN2022.08.10
コラム

【今だから知りたい「人的資本」の重要性】Vol.1 人的資本が注目される背景

今だから知りたい「人的資本」の重要性 vol.1人的資本が注目される背景

昨今、「人的資本」という単語が多く飛び交うようになりました。
人的資本経営しかり、人的資本管理やISO30414しかり。多くの人事担当者の方からしてみると、その単語を耳にしたことがあっても、「その詳細は?」「なぜいま急速に?」と多くの疑問を抱えてらっしゃるのではないでしょうか?
ツナグ働き方研究所では、「そもそも人的資本とは?」や「注目を集める背景」から「具体的な取り組み事例」や「今後の展望」まで、人的資本の概略について、数回にわたりレポートさせていただきます。人事担当者が「人的資本」に対して感じている疑問に少しでもお応えきるようなコンテンツをお届けします。
人的資本は本当に注目されているのか?

Google Trendsにて「人的資本」を検索キーワードに過去5年間人気度の動向を調べてみると2021年頃から少し上昇し、2022年から現在まで急激に伸びていることがわかります。


要因は複数あると考えられますが、各人材系企業の広告を見ても「人的資本」の文字が増えていることが、一因であることは間違いなさそうです。


また、「人材版伊藤レポート2.0」(METI/経済産業省)」が2022年5月13日公開された後、人気度が96迄急上昇しました。このレポートも注目に拍車をかけた要因になっていると考えられます。


 


※2022年7月11日 Google Trendsにて「人的資本」を検索キーワードにて


そもそも資本とは、一般的に事業を行うために必要となる「資金」を指します。ただし、学問分野によって厳密には意味が異なり、近代経済学においては土地と労働に並ぶ生産三要素の1つとして定義されています。人的資本の定義については、各国の国際機関や会計基準等において様々な定義がされており、確固たるものはありません。1つ例を挙げると、経済協力開発機構(OECD)では、「個人の持って生まれた才能や能力と、教育や訓練を通じて身につける技能や知識を合わせたもの」と説明されています。


改めて人的資本について、端的にいうと「モノ・カネ」のように、「ヒト」の持つ能力を資本としてとらえた経済学の用語で、具体的には、個人が身につけている技能・技術資格・能力等のことを指します。人的資本への投資は、生産力や経済活動への貢献に繫がると定義されます。


たとえば、子育てや教育、保健衛生に対して投資を行い、結果として、経済的な成功や豊かな生活を享受することで社会的な成長が得られたとしましょう。この場合、投資の対象、つまり資本は「ヒト」であり、投資によって得られた対価が社会的な成長です。


これを企業に当てはめると、採用や研修、多様性の維持や労働安全といった「ヒト」にまつわる様々な領域に投資を行い、売上や利益の向上、ブランディングや価値の創造を行って企業の成長という対価を得られると考えられます。


人的資本への投資は、健康状態の改善、個人の幸福感の向上、社会的結束の強化等、多くの非経済的利益をもたらす重要なものです。しかし最終的には経済的利益に繫がると広く定義されることもあります。


人的資本が注目される背景

アメリカでは2020年8月に米国証券取引委員会(SEC)がアメリカの上場企業に対して人的資本の開示を義務化しました。ここでは定性情報だけではなく、定量情報の開示も義務化されています。人的資本情報の開示が義務化されたという事実は、投資家が人的資本情報を重要視しているという意味に他なりません。市場環境の変化が激しいため、経営における人的資本の重要性が高まり、投資判断においても人的資本情報が重要になっているのです。


・企業の市場価値の構成要素が有形資産(モノ・カネ)から無形資産に移行人的資本の情報開示要求は、証券市場を起点としており、投資家にとっての投資判断における各企業の人材戦略や人事施策の重要性が、年々増加しています。これは、企業の市場価値の構成要素が有形資産(モノ・カネ)から無形資産に移行しつつあることが理由です。


・投資家による重要性の認知ESG投資の根幹は、企業経営のサステナビリティ=持続性を評価することですが、近年重要性が認知されていることも理由のひとつに挙げられます。そもそもESG投資とは、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことです。企業を長きにわたって支えている人材(人的資本)は「S(社会)」に関連すると位置づけられ、投資家は、財務状況と同様に人的資本の情報を確認し、企業への投資の判断材料としています。


もはや投資の判断に欠かせない材料

例えば、開示されている短期的な人的資本状況が堅調であったとしても、人材育成がおろそかになったり、人材戦略がビジネスモデルや経営戦略と一致していなかったりすれば、長期的にはリスク要因となる恐れがある、と認識されるでしょう。結果として「S(社会)」に関するレーティングが高い企業は、株価のパフォーマンスが高いという傾向も発表されており、人的資本に関する項目は、ますます企業価値に直接的にリンクすると考えます。


投資家側は、人的資本についてここまで注目される前から、人的資本開示の必要性を強く意識してきました。昨今の定量化や財務情報との連動は積極的に評価するが、比較可能な美しいデータを求めているわけではありません。他社と比較困難な項目であっても、経営者が何を見て、何を意識しているかも重要な情報です。


定量化できるものだけ開示しても本末転倒。定性的な情報や、算出式だけでもわかれば有益なことも多い。つまり、きれいなデータを出して終わりになるなら、まとまってなくてもよいので企業の考えがわかり、対話の糸口となるような情報を開示してほしい。こう考える投資家はたくさんいました。実際、数年前の調査では企業側と投資家側の開示レベルのギャップが浮き彫りになったデータがあります。


意欲のある企業にとってはチャンス

このように注目を集める人的資本ですが、議論なされている人的資本開示の内容が、肝心の受け手である投資家や市場に取って価値あるものにできるかどうか、最終的には各企業の工夫に委ねられることになりそうです。


これは、実はチャンスでもあります。他の企業が通り一遍の義務的な対応をしているのであれば、市場のニーズに即した、意味のある開示内容を提供することで差別化や優位性を生み出し、企業価値やブランディングに繋げやすいともいえるでしょう。


人的資本の開示に注目しているのは投資家や市場だけではありません。昨今では企業のESGへの取り組みが就職活動中の求職者にとっての判断材料に含まれるようになりした。積水ハウスが行った「男性育休白書2021特別編」というアンケートによると、74%の学生が男性の育休促進に注力する企業を「選びたい」と回答しています。就職活動を行っている学生にとって、自分が入社するかもしれない会社がどのような人事施策を取っているか非常に気になるポイントとなるはずです。ここで他社との差別化を行うことは、すなわち優秀な従業員の獲得にも好影響を与えることになります。


人的資本を中心に据えた企業活動が、必ずやこれから不可欠になっていくでしょう。


◆プロフィール

玉井生

ツナグ働き方研究所
研究員

求人広告・採用代行(RPO)・採用コンサルティング・人事コンサルティング・派遣・人材紹介など幅広い人材領域でコンサルタント・企画業務を中心に従事。
株式会社ツナグ・グループホールディングスで経営戦略立案業務を中心に他グループ企業2社で従事。
人的資本経営やISO30414に興味を持ち、2021年より研究を開始。

◆本件に関するお問い合わせ先

ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)
担当 :和田
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