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ツナグ働き方研究所

03 COLUMN2019.02.15

  • コラム

    【店長応援企画・店長のミカタ】
    主婦の「働きたい」気持ちに寄り添う支援の形

    おもてなしの国ニッポン。その世界最高峰のサービス力を支えるのは、間違いなく現場を仕切る店長だ。飲食業界を牽引する主役たちが、どのように働き、どのようなキャリアを積んでいくのか。21世紀のニッポンの働き方を考える上で、この命題は非常に重要なイシューだ。
    今回は、飲食業界にとっても貴重な戦力である主婦の働き方を支援するお二人に集まっていただいた。それぞれ違った角度ではあるものの、ともに主婦の「働きたい」気持ちに寄り添った取り組みを展開しているイノベーターだ。特に結婚して出産・育児のために一度仕事から離れた主婦層に活躍してもらうためのノウハウについて、鼎談形式でそれぞれのお考えをお聞かせいただく。
    主婦の働き方改革を推進する二人のオリジネーターの取り組み

    平賀

    藤代さんが代表を務めるママスクエアは、キッズスペース付きオフィス、育児と仕事の両立をする主婦のための職場環境を生み出したオリジネーター。そして、川上さんは、主婦層の派遣やパート、さらにはハイキャリア主婦の再就職をサポートするビースタイルという会社で、「しゅふJOB総研」を立ち上げられて。それぞれの事業設立の経緯を教えていただけますか。



    藤代

    いわゆる保育園待機児童の問題で、子どもを保育園や託児所に預けることができなくて、仕事を諦めている主婦がたくさんいらっしゃいます。行政も努力してはいますが、実態はなかなか改善されない。ではどうしたら主婦たちが安心して働けるのかということを、むしろ企業側が考え、能動的に実践していく必要があると感じました。



    平賀

    現在では全国に展開し、多数の企業や自治体からの要請などにも応える形で事業が拡大していっています。実際に働く主婦の方たちにとって、ママスクエアの環境は、やはりとても喜ばれているのではないですか?



    藤代

    そうですね。例えば、保育園に運良く預けることができた方でも、もし二人目を出産した後、また保育園に預けられる保証はどこにもないですし、上の子と下の子を別々の保育園に預けることになって送り迎えが大変だという例も数多くありますよね。でもママスクエアなら預け先が明確だし、何より目の届くところに一緒にいられるし、皆さん安心して仕事に取り組めています。



    平賀

    環境面から女性の働き方改革を推進しているのがママスクエアだとしたら、ビースタイルは、主婦層の潜在的なスキルをいかに活用するか、企業側への働き掛けも含めて改革していった先駆者だと思います。



    川上

    2002年に創業していますので、女性活躍社会とか、働き方改革とか言われるようになるずっと前から取り組んでいます。創業者である三原が、それ以前に大手で派遣事業に携わっていたのですが、そこで優秀な主婦の方がその能力を活かせるパート仕事がなく、不本意な職種で働いているという現状を見て、それはとてももったいないことだと感じたのがきっかけでした。


    控えめな態度は責任感の裏返し主婦の方たちは「できる」と安請け合いはしない

    平賀

    しかし、その頃はまだ主婦を積極的に採用する機運はほとんどなかった時代ですよね。企業の採用担当者や、職場そのものの在りようを変えるというのは、いわば意識改革でもあって、なかなか大変だったのではないかと思うのですが。



    川上

    そうなんです。でも、人口動態を見れば将来的に日本が深刻な人手不足に陥ることは明確でしたし、ポテンシャルの高い主婦層は戦力として重要視される時代が来ることは予見されていました。



    平賀

    なるほど。一方で、再度仕事に就くことを諦めてしまっていた主婦の方たちが「自分もまたしっかり働けるんだ」と自信を持ってもらうことも必要だったのではないかと思います。その辺りはいかがでしたか?



    藤代

    非常に優秀なのに控えめな方が多いんです。即戦力になり得るスキルを持っているのに、ブランクがあるからと自信をなくしているんですよね。例えばパソコンのOSが変わってしまうと、自分はもうついていけないのではないか、とか。なので、最初なんとなく自信なさげに見えてしまうことが、採用する企業の方からしたらマイナスに映ってしまうのかもしれません。



    川上

    控えめなのは責任感の裏返しでもあるんですよね。主婦の方は、ママ友だけでなく地域コミュニティでさまざまな人と円滑にコミュニケーションを取る術に長けていて、とても「大人」なんです。だから「できるかもしれない」と思っても「できる」とは明言しない方が多いように思います。



    平賀

    ハイキャリアの方でも、自信のない方がいたりするんですか?



    川上

    ビースタイルにはハイキャリアの方もたくさんいますが、やはりブランクの長さを気にされる方は多いですね。なので、再就職にあたってまずは入りやすい職種から始めて、勘を取り戻しながらステップアップしていくという流れの方も多いです。



    藤代

    うちに応募してくる方の中にもTOEIC850点以上の方とか、中国語がペラペラな方とか、いるんです。



    川上

    専門スキルを持った主婦層へのニーズは非常に高くなってきていると感じます。時短勤務でも、例えば元人事部で働いていた方が企業の採用部門で働くことになって、労務関連の法律にも明るいし、採用者との契約まで任せられるということで、幸福なマッチングが成立しています。


    主婦業に専念した期間を「ブランク」とは言わせたくない

    平賀

    そうした成功事例が増えていっている一方で、まだ企業サイドには、「本当はフルタイム勤務で活躍してくれる人材が欲しい」という希望も根強いように思います。



    川上

    私どもの調査で、主婦層に「昨年と比べて働きやすくなったか?」という調査を行っているのですが、「働きやすくなった」と回答したのは、わずかに3分の1程度でした。期待感はすごく高まっているのに、日本における雇用形態を含む労働環境は、まだ主婦が「働きづらい」ということになっています。



    藤代

    私も時々、企業の方と打ち合わせをしている時に「この仕事、ブランクのある主婦の方にこなせますか」という言葉を投げかけられたりします。



    川上

    むしろ、主婦業をこなすことによって、新たなスキルが身に付いてると思うんですよ。「家オペ力マトリックス」はそれを可視化したもので、主婦業に専念していた期間は決してブランクではないという思いから編み出したものです。その期間に、どれだけすごい能力を身に付けて成長したのかを、本人が自覚して自信を付けてもらうためのものでもあります。



    平賀

    なるほど。



    藤代

    仕事か子どもか、という二択を迫られたら、多くが「子ども」なんですよ。でも、その二択に追い込まれず働くことも可能なんですよね。つまり、企業が「先発完投型」の人材を求めていて、延長戦まで投げ切っても、翌日もまた先発してくれるような人を理想としてしまっているから、主婦はその二択の呪縛から逃れられない。



    平賀

    けれど、時短──言ってみれば中継ぎとしていい仕事をしてくれる人材がいて、分業が機能している企業は効率的ですよね。



    川上

    全員が先発である必要などなくて。分業の考え方はもっと広まるべきですね。



    平賀

    先発完投型人材だけを求めていくのは、もはや今の時代ではナンセンスですよね。そもそも主婦にも、スマートキャリア型の人もいれば、ワークライフバランス重視な方もいるわけで。



    藤代

    主婦というだけでひとくくりにしてしまうのは、ホントにもったいない話です。



    川上

    ビースタイルには延べ40万人会員がいるのですが、いろいろな声を拾って分かるのは、40万人いれば40万通りのニーズや思いがあるということ。ほんとに藤代さんがおっしゃる通りだと思います。主婦だとか男性だとか外国人だとかは関係なく、仕事の成果として見ることが重要なんですよ。



    藤代

    そういう意味では、うちもビースタイルさんも、仕事の配分の仕方やマネジメントのロールモデルを、もっと世に知らしめていく必要があると感じています。



    川上

    そうですね。それがアクセルになればいいですね。



    平賀

    雇用側のパラダイムシフトが重要な時代ですよね。


    ビジネスモデルを広めていくことで働き方改革や女性活躍を推進する

    平賀

    主婦の方に活躍してもらうポイントについて、非常に普遍的な示唆が多く、飲食業界においても、参考になるお話ばかりです。ここであらためて、飲食業界で主婦の方がその能力を発揮するために、という視点でお話をお伺いしたいのですが。



    川上

    確かに、飲食業界はランチタイムだけとか、この曜日だけとか、さまざまな産業の中で、最も分業が進んでいる業界だと言えるかもしれません。そういう意味では、ダイバーシティの先駆的業界ですよね。



    平賀

    分業化が進む飲食業界で、主婦層の力を活用するメリットは、他にどんなところがあるとお考えですか?



    川上

    例えばメニューの考案や、キッチンでの作業効率など、主婦業からアイデアを得るものは非常に多いと思いますし、既存の仕事内容に当てはめるだけでなく、AIやロボットの導入で店舗の回し方が変わってくれば、新たな仕事のバリエーションも生まれてくるので、そこを早い段階でイメージできるといいですね。



    平賀

    これからは主婦の力をどう活用するかというより、働きたい主婦層から選ばれるような、魅力的な職場を構築していかなければいけない時代でもあると思います。



    川上

    そうですね。仕事の魅力を高めていくことも大切でしょう。



    平賀

    藤代さんは親子Cafeで実際に主婦の方の働きぶりを見て、何か感じたことはありましたか?



    藤代

    最初は主婦に特化して募集をしたわけではなかったのですが、そこで働く主婦の姿を見て、その能力の高さに驚いたんです。なので2号店では主婦を優先的に採用して、3号店ではシングルマザーを店長に抜擢しました。



    平賀

    育児で大変なシングルマザーの方が、店長業務をこなすのは本人的にもプレッシャーだったのではないですか?



    藤代

    前の店舗で実績を積んだスタッフだったので、お店に対してのロイヤリティはとても高かったんです。なので、人手が足りない中で、「やれる」とは言わないけれど、こちらが困っていると「やりましょうか」と言ってくれて、とても頼りになる存在でした。責任者にはなりたくないんだけど、「助けになりたい」というホスピタリティを持っている人が非常に多いんですよね。



    平賀

    なるほど。自分から表に立とうというのは大きな覚悟がいるけれど、状況を見て、自分の力を活かせる場面では惜しみなく発揮してくれる。



    藤代

    そうです。そして自信が付いてくれば、その時には自然と「店長」になっているんですよね。



    平賀

    今日はとても有意義なお話を聞くことができて、よかったです。



    川上

    私も今日の鼎談はすごく勉強になりました。ママスクエアのようにビジネスモデルを広めていくことが、働き方改革や女性活躍の推進に大きなパワーを与えるということ。ノウハウを提供することも、ビースタイルとして重要な役割なのだということもあらためて認識しました。しゅふJOB総研として、雇用側が抱くステレオタイプなイメージを崩していくことも本当に重要だと感じます。



    藤代

    私にとってもとても有意義な時間でした。われわれも、働く人一人一人の声に耳を傾けてよりよい社会を実現していけたらと思います。



    平賀

    主婦の働きぶりや成果に対して、正しく期待して正しく評価をすること。シンプルですが、ここに一番の成功のヒントがあると思いました。今日はお忙しい中、ありがとうございました。

    * * *


    お二人の話から、あらためて主婦の方のポテンシャルの高さを感じることができた。子育てで培ったマルチタスク処理能力やホスピタリティ、主婦目線でのマーケティングセンスなど、ならではのチカラは、非常に心強いではないか。シフトを埋めてくれる存在にとどまるのではなく、主婦だからこそ活躍できる。彼女たちへのそんな期待が、飲食業界の最前線にこそ、必要なのかもしれない。


    ◆本編資料(PDF)もしくは参考サイト(URL)はこちらから

    しゅふJOB総研

    株式会社ママスクエア

    ◆プロフィール

    川上敬太郎(かわかみ けいたろう)

    しゅふJOB総研
    所長兼ヒトラボ編集長

    ◆プロフィール

    藤代聡(ふじしろ さとし)

    株式会社ママスクエア
    代表取締役社長

    ◆本件に関するお問い合わせ先

    ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)
    担当 :和田
     ※お問い合わせは、お問い合わせフォームからお願いいたします。