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ツナグ働き方研究所

03 COLUMN2019.04.15

  • コラム

    【店長応援企画・店長のミカタ】
    4月からスタートする「特定技能」。外国人雇用のリアルとは?(前編)

    おもてなしの国ニッポン。その世界最高峰のサービス力を支えるのは、間違いなく現場を仕切る店長だ。「飲食業界」を牽引する主役たちを、どのように支援していくのか。この命題は非常に重要なイシューだ。

    さて、今回は人手不足にあえぐ現場に朗報をもたらす法改正にスポットを当てる。外国人の在留資格として新しく「特定技能」項目を盛り込んだ、出入国管理及び難民認定法の改正が4月から施行される。これまで飲食店での外国人スタッフといえば、例えば留学生が資格外活動の許可を取って、アルバイトとして働くといったケースが多かったわけだが、この法改正によって外食分野でも、外国人のフルタイム雇用ができるようになるのだ。これが飲食業界にとってどんな追い風となるのか、はたまた、どんな点に留意すべきなのか。

    二人の専門家に、飲食業界における外国人雇用のリアルを聞く。前編では、フード産業特化の人材サービスを中心に食領域での事業展開を行うクックビズ社代表の藪ノ賢次氏に、後編ではベトナム人材特化のHRカンパニーであるasegonia(アセゴニア)を率いる井上義設氏に話を伺う。


    ■後編:asegonia(アセゴニア)・井上義設氏との対談内容はこちら


    飲食でバイトしている留学生がそのまま外食産業での就職を希望するわけではない

    平賀

    クックビズフードカレッジでも、外国人スタッフの採用や教育に関しての講座がありますよね。これは、今回の法改正を受けてのことですか?



    藪ノ

    いえ。最初は、関西のある商業施設から、外国人スタッフ受け入れに関して、講座をお願いされまして。そこから組み入れるようになったんです。



    平賀

    今回の法改正が決まる前から、そうした動きに敏感な企業はあったわけですね。



    藪ノ

    そうですね。ただ外食産業に携わる方たちの多くは、今まさに混乱しているところじゃないですかね。



    平賀

    というのは? 人材採用に悩みを抱える外食産業にとって、「特定技能」の対象業種に「飲食業」が入ったのは朗報じゃないですか。



    藪ノ

    そうなんですが、何しろ今回の特定技能の中に外食分野も入ると閣議決定されたのが昨年の12月のことで。それが4月から施行という急発進ですから。



    平賀

    なるほど。まだ細部で決まってないこともありますよね。それにしても、想定される規模は外食で5万3千人。受け入れる数として最大規模ですよね。実際にはどんな人が、働こうと動き出すのでしょう。



    藪ノ

    やはり留学生だと思います。現在も約9万人が飲食店で働いていますから、そのまま特定技能の資格を取ってコンバートという形が現実的かと思いますね。



    平賀

    留学生がその留学期間を終えて、そのままフルタイムで飲食の仕事に携わるというのは、現時点では法的にOKなんですよね?



    藪ノ

    特定技能に関しては「卒業見込み」ならOKです。留学中でも特定技能評価試験を受けることもできます。ただし、退学・除籍となった留学生には受験資格がありません。



    平賀

    飲食店でアルバイトしている留学生は増えています。しかし彼らには週28時間という労働時間の足かせがあります。特定技能資格を取得したらフルタイムで働けるようになるのは、魅力ですよね。



    藪ノ

    それはどうでしょうね。今回の特定技能って、簡単に言うと社員レベルの働き手なんです。留学生だって、必ずしも外食でバイトした=そのまま飲食業に就職したいというわけではないんです。



    平賀

    なるほど。人手不足の企業サイドからすると、どうですか?



    藪ノ

    「うちは留学生がアルバイトで多く集まってくれているから大丈夫」という企業は多いと思います。



    平賀

    確かに言われてみると週28時間って、日本人の平均バイト時間と同じくらいですもんね。雇う側の視点に立って、普通にシフトを回す上ではフルタイムじゃない留学生でもいいってことですもんね。



    藪ノ

    ただ、今後は特定技能の対象となる14業種内で人材の取り合いとなります。いまバイトで働いていても、必ずしも今後も働いてくれると思うのは、リスクがあります。もちろん、飲食業においても外国人を積極的にフルタイムで雇用するメリットはあります。例えば、インバウンドのゲストに対するより良いサービスが行えるというのは大きな強みの一つです。日本語も話せて、それに加えて英語や母国語も話せる人は、これからの日本のサービス業にとって非常に得難い存在だと思います。いまや、海外からの観光客は外食だけでも年間1兆円に迫る勢いで消費してくれていますから、より多く日本で消費してもらうためにもさらに快適なサービスが求められます。



    平賀

    なるほどインバウンド対応ね。



    藪ノ

    もう1点。海外進出をすでに積極的に行っていたり、これから視野に入れて進めていこうという企業にとっては、日本でサービスを学んでもらって、その後、母国へ彼らが戻って、そこで幹部として店舗を運営してもらうという流れができるという点。そこを考えれば、非常に大きなメリットが享受できるし、日本人と同等以上の賃金で雇うという今回の決まりも当然かと思いますね。


    雇用側や受け入れ側の、理解や配慮の仕方がカギとなる

    平賀

    外国人から見て、日本のサービス業・飲食業で働くメリットはどんなところにあるんでしょうか。



    藪ノ

    例えば製造業などと比べても、身近なところで日本語を学びやすいというのが一番のメリット。1年くらいで話せるようになるので、やはりその意識が高い人には人気の業種です。母国での仕事にも活かせますから。



    平賀

    外国人を雇用する上での注意点は、どんなところにありますか?



    藪ノ

    特定技能の外国人労働者の雇用を進めていきたいのなら、しかるべき団体に加入するなり、サポートやコンサルのサービスを受けるのが得策だと思いますね。法整備もまだ不十分な段階で、それを100%理解するというのは非常に難しいと思います。



    平賀

    それこそ店長さんは、ただでさえ今も多忙を極めていますしね。



    藪ノ

    それをクリアしたとして、一番の問題は、雇用側や受け入れ側が、韓国人も中国人もベトナム人も、全て「外国人」と言って一つにしてしまうところです。それぞれ文化も宗教も違うから、それぞれ配慮の仕方も異なるはずなのに、同じように扱ってしまう。それがトラブルの要因だったり、離職の原因にもなるので。



    平賀

    確かに実際に働いているのは「外国人」ではなくて、それぞれの国の「人」。さらに言えば国籍がどこであろうと、一人一人個性が違うわけで、その中で、どんな人に働いてほしいか、どういう人なら自分の店で能力を発揮してもらいやすいのかを考えていくべきですよね。


    ◆プロフィール

    藪ノ賢次(やぶの けんじ)

    クックビズ株式会社
    代表取締役社長CEO

    ◆本件に関するお問い合わせ先

    ツナグ働き方研究所(株式会社ツナググループ・ホールディングス)
    担当 :和田
     ※お問い合わせは、お問い合わせフォームからお願いいたします。